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大谷翔平騒動で注目、「無法地帯」化した米スポーツ賭博市場の現況...若者を中毒にさせる「インゲーム・ベット」とは何か?

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月1日 18時0分

大谷をめぐる一件は、米スポーツ界で続く賭博スキャンダルの最新の事例だ。昨年には、NFL(全米プロフットボールリーグ)でギャンブル規定違反による選手の出場停止処分が相次ぎ、アイオワ大学とアイオワ州立大学の現役・元アスリート20人以上が、大学スポーツを対象にした違法賭博容疑で告訴された。

「問題の一環は、スポーツ賭博がスポーツ界と密接に絡み合っている現状だ」と、ホールデンは話す。プロリーグは大手賭博業者と提携するようになり、米スポーツ専門チャンネルのESPNも公式ギャンブルプラットフォームを擁している。

最初は娯楽目的でも、ギャンブルは依存症につながりかねない。全米ギャンブル依存症対策協議会(NCPG)が運営するホットラインへの電話相談件数は、この3年間で倍増した。「助けを求める人が増える一方だ。依存症になるまでの期間が短期化していることを示す証拠も複数存在する」と、NCPGのキース・ホワイト事務局長は言う。

ギャンブル依存症リスクの3割は遺伝性で、残りの7割は環境が要因だと、ホワイトは指摘する。依存症になりやすい人の場合、コカイン依存症と同様、重度のギャンブル癖は脳の器質的変化と関連している。

賭博愛好者は「耐性」を獲得するため、賭け金を増やさなければ以前と同じ興奮を得られない。さらに、ホワイトによれば「負けた場合も、勝ったときとほとんど変わらないほど心理的に興奮し、ほぼ同程度のドーパミンが放出される」と言う。

だがコカインと違って、ギャンブルに過剰摂取はあり得ない。だからこそやめるのが難しく、賭け金を手に入れるために窃盗をしたり、深刻な精神疾患を発症する「絶望段階」に至る可能性がある。一般的に、この段階にならないと、依存症患者は助けを求めようとしない。

後れを取る法制化の動き

専門家が特に懸念しているのは、米国内で最も急速にスポーツ賭博が普及している若年男性層だ。スポーツ賭博を合法化した州の大半は21歳以上という制限を設けているが、仲間や家族・親族のアカウントを利用する抜け道が使われている。

スポーツ賭博を行う若年層の約9割は、進行中の試合が対象の「インゲーム・ベット」をしている。これは衝動的浪費のリスクが最も大きい。「興奮状態で、友人と一緒だったり飲酒していたりするかもしれない。抑制が利かなくなり、判断力が鈍りかねない」と、ナウワーは言う。

スポーツ賭博に関するルールは各州に一任されているため、全国的な監視体制は存在しない。スポーツ賭博の広告も同様で、セレブを起用した広告があふれている。ある推定によれば、アメリカでのスポーツ賭博の総広告費は今年、29億ドルに達する見込みだ。「たばこや酒類と同じく、ギャンブルの広告は連邦レベルで規制すべきだ」と、ナウワーは語る。

米下院では1月、活動団体の支持を受けて、ギャンブル依存症回復・投資・治療(GRIT)法案が提出された。スポーツ関連の連邦消費税収入の50%をギャンブル依存症の予防や治療、研究に振り向けることなどを義務付ける内容だ。

だがテクノロジーを追い風にしたスポーツ賭博の加速度は、法制化の動きをはるかに上回るようだ。「パンドラの箱が開いてしまった」と、オクラホマ州立大学のホールデンは嘆く。「元に戻すのは極めて難しい」

メーガン・ガン(ライター)


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