Googleに挑む男から見たAIの今と未来 PerplexityのAravind Srinivas氏
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月9日 11時40分
【Google誕生の背景と、今のジレンマ】
AI技術の中でも自然言語処理技術は、文章を理解して、文章を生成できる技術。検索エンジンは、本来なら自薦言語処理技術を利用すべきサービスだ。ところがGoogleが誕生した当時は、自然言語処理技術がまだまだ十分に発達していなかったので、Webページ上の情報の意味や重要性をAIが理解できなかった。そこでGoogleの創業者たちは、自然言語処理技術でWebページの重要性を測るのではなく、そのWebページにどれだけ多くのリンクが貼られているかで重要性を測ることにした。価値のあるWebページなら他のWebページから数多くリンクを貼られているはず、という考え方だ。
これが大成功。Googleは巨大企業に成長した。
ところが自然言語処理技術がここにきて急速に進化してきた。リンクの数で重要性を判断しなくても、AIは何が重要なのかを理解できるようになり、重要な情報をまとめて文章を生成することも可能になった。ユーザーは、検索結果のページ上のリンクを順番にクリックしてそのページに飛ばなくても、チャット型AIが質問にダイレクトに答えてくれるようになったわけだ。明らかにそのほうが便利だ。検索エンジンからアンサーエンジンへと時代へ移行しようとしている。
それでもGoogleはリンクベースの検索エンジンにこだわる。
「プロダクトの観点で言えば(リンクではなく)直接答えを提示することが正しいと分かっていても、Googleは株価の観点からそれができないでいる」(2:59)とSrinivas氏は指摘する。
Googleは、広告主のページへのリンクが表示されたり、ユーザーがそのリンクをクリックすることで収益を得ている。チャット型AIでは、ユーザーはリンクをクリックしない。広告収入が入ってこなくなる。なのでGoogleは、OpenAIやPerplexityのようにチャット型AIに全力で向かえないわけだ。いわゆるイノベーターのジレンマという現象だ。「Googleの目指しているものとユーザーの求めるものが一致していない」(0:36)とSrinivas氏は言う。
リンクベースの検索エンジンからアンサーエンジンへと移行する中で、Googleは収益モデルをどう変えてくるのだろうか。検索連動型広告を続けながらも、別の収益源を探すしかないとSrinivas氏は言う。OpenAIがやっているような、エンドユーザー向けのサブスクモデルもそうだし、企業向けのAPI利用料金もそうだが、収益になりそうな事業を片っ端から試していくしかない、とSrinivas氏は言う(12:47)。「Googleが大胆な戦略転換に出るかどうかは分からない。でも僕の勘では、GoogleはOpenAIなど他社が試して成功した方法を真似てくるだけではないかと思う」(13:29)。
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