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「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界で愛される「これだけの理由」

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月1日 14時10分

スタジオジブリの世界的な評価の確立は、02年のベルリン国際映画祭での『千と千尋の神隠し』の金熊賞(グランプリ)受賞にある。映画界の最高峰とされる場所で、アニメーション作品がグランプリを獲得したことは当時大きな事件だった。

スタジオジブリには国境や世代を超えて共感される物語があり、世界的に普遍のテーマがあるとの評価がここで広く認められた。

日本アニメの多様さと自由さ

キッズ向けのテレビアニメ、ヤングアダルト向けのエッジの利いた作品、それに作家性を発揮しつつも世代を超えるスタジオジブリと、世界に送り出される日本アニメはばらばらで、脈絡がないように映る。

だが「日本アニメ」全体に対する評価は、むしろこの幅広さと多様性にある。あらゆるジャンルの物語、表現、映像が飛び出すことこそが日本アニメの特徴であり、強みなのである。

海外の人気とひとくくりにされがちだが、実際には「海外」という国があるわけではない。そこにあるのはアメリカや中国、フランス、タイといった歴史も文化も異なる国々だ。そうした異なる文化に対して、それぞれに違った文脈で違った作品をアニメは届けることができる。

もちろん『ドラゴンボール』や『NARUTO』『ポケモン』のように、世界中で人気という作品はある。しかし『ドラえもん』や『名探偵コナン』の人気はアジアが中心だし、アメリカではサイバーパンク、アクション満載の作品が好まれる。

70年代、80年代のテレビアニメはヨーロッパで広く受け入れられてきた。さらにフィリピンで実写ドラマ化もされた『超電磁マシーン ボルテスV』の人気は70年代末の同国に限られた現象だった。日本アニメの受け入れられ方は一般に考えられているより多様で複雑だ。むしろここに日本アニメの人気の秘密がある。

ただし日本アニメはいつの時代にも、どの国でも人気があったわけでない。自由奔放な表現もあり、作品を規制する動きも少なくなかった。有名なのが、80~90年代に起きたフランスでの排斥運動だ。

アジアで人気が高い新海誠 JOSHUA BLANCHARD/GETTY IMAGES

後にフランス大統領選にも出馬する政治家セゴレーヌ・ロワイヤルらは、日本のアニメやマンガはエロとバイオレンスに満ちていると主張し、結果として日本のアニメのテレビ放送が一気に減ることになった。

中国でも00年代初めに『テニスの王子さま』『鋼の錬金術師』などの人気が盛り上がったが、00年代半ば以降はテレビ放送の新たな番組許諾が全く下りなくなり、人気は下火になった。

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