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「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界で愛される「これだけの理由」

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月1日 14時10分

再び盛り上がるのは、10年代になって動画配信サイトが正規配信を始めてからだ。こうした規制は今でもあり、表現規制の強まっている中国では、近年、現地で上映や配信ができない日本アニメが増えている。過去数年で日本アニメへの規制が緩和された中東でも、同性愛表現は厳禁だ。

さまざまな表現に果敢に挑戦することが日本のアニメの強みの1つだけに、こうした規制が今後強まるかどうかは制作側にとっても気になるところだろう。

ビジネスでの成功が追い風に

近年の日本アニメにとっての成果は、長年の課題だったビジネス面での成功だ。関係各社の海外売り上げが大きく伸びている。

かつては作品の人気に比べると、日本が得られる利益が少ないとされていた。アニメを販売する各社が海外で大きく儲かったとの話もあまり聞かなかったし、日本のアニメスタジオの多くは中小企業のままだ。

それはアニメビジネスの形態によるところも大きかった。かつてのアニメビジネスは、国・地域それぞれの配給会社に、定額でその国・地域の権利を販売して終わりだ。番組を購入する現地企業の大半が映像会社だから、関連グッズなどの商品展開もない。日本のような2次展開のビジネスは期待できなかった。

さらに大きな問題は、海賊商品だ。ひと昔前のアニメに詳しいファンなら、海外で日本アニメと言えば海賊版を思い浮かべる人もいるだろう。00年代末頃まで、日本アニメの海賊版はリアルにもネット上にも世界中にあふれていた。

筆者は00年代半ばに訪れた上海で、ビル1棟を丸ごと使って海賊版を売っている店を見つけて驚愕した。道路の端から端まで海賊版の露店という光景も目にした。そこではDVDはもちろん、グッズからコスプレの衣装まで、全て海賊版といった状況だ。

中国だけでなく、どこの国も似たような状況だった。アメリカやフランスなどで開催される大きなアニメイベントの会場は、海賊商品のショップが大にぎわいだ。

海賊版があふれた理由は価格の安さもあったが、むしろ十分に正規品を供給できていないことだ。ビデオソフトですら発売は日本よりも何年も遅れ、商品のラインアップは限られ、それさえどこで買えばいいか分からない。

世界同時配信のインパクト

しかしカルチャーサイドだけでなくビジネスサイドでも、過去10年で状況は大きく変わっている。今や日本企業は新しい市場は海外にあると認識して、各国に直接進出し、自ら利益を上げる構造を築きつつある。

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