手に負えないのはADHDだから? 家族に順位を付け、父親を「君づけ」で呼ぶ不登校小6男子の場合
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月17日 16時0分
母親のウソで「もう二度と病院には行かない」
J君は小学6年生です。5年生の頃から、授業中に友達にちょっかいを出して邪魔をしたり、友達の図工の作品を落として壊したり、宿題を忘れたりすることが多くなっていきました。校内ランニングや合唱練習など、自分がやりたくないことがある日は、わざと遅刻したり、サボッたりもするようになりました。
先生に注意されると、口答えをしたり、茶化(ちゃか)して逃げたりしていました。
自分勝手な行動、それに周囲に迷惑をかけても謝らずに威張っていることなどから、クラスの中でも次第に孤立していきました。
ある日、副校長先生に強く叱責されたことをきっかけに、「学校はつまらないから、もう行かない」と家でゲームをしているようになりました。
「忘れ物が多く、落ち着きもない。ADHDではないか。専門医を受診するように」と養護教諭から言われ、クリニックに両親が来院しました。
J君の姿はありません。両親は「本人は、絶対に受診はしない」と断言しました。
それには、こんな背景がありました。
養護の先生から、ADHDと指摘されたことにショックを受けた母親は、すぐに母方の祖父に相談しました。そして、祖父が選んだ医療機関にJ君を連れていったそうです。
このように、母は困ったことがあると、夫ではなく自分の父親を頼りにすることが多かったようですが、問題はそのやり方でした。
母親はJ君に「自分が病院へ行くので、付き添ってほしい」とウソをついたのです。
それは本人に余計な心配をさせず、速やかに受診させるためという、祖父のアドバイスでした。
ところが、母親の付き添いのつもりで病院に行ったJ君自身が、「まずADHDの検査を受けて、その結果次第で薬を飲むか、カウンセリングを受けるか」と医師から言われました。
騙(だま)されたことを知り、「もう二度と病院には行かない」と宣言したそうです。J君が驚き、怒り、病院に対する反発心を覚えたのも無理はないかもしれません。
そこで、私は両親から詳しい話を聞いていくことにしました。
自分で注文した料理を「やっぱりおいしくなさそう」と父親に食べさせる
J君は両親と姉の4人家族で育ちました。以前は、家族で2LDKのマンションに住んでいましたが、小学4年生になったとき、母親の実家、つまり祖父の家の敷地内に家を建てて、そこに住むようになりました。その地域の名士だった祖父が高齢になったため、一人娘の家族と近くに住むことを望んだためでした。
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