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「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 17時18分

見逃せないのは、それで政治力がついえるかと思いきや、事実は逆だったことだ。

確かに17年4月に74%あった支持率は、騒動後の18年7月は49%にまで落ち込んだ(いずれも朝日新聞)。しかし、20年初めからのコロナ禍で人々の不安が膨らむのを感じ取り、持ち前の発信力に再び火を入れた。

迎えた7月の都知事選では、歴代2位の366万票という圧倒的な得票を得て再選。21年6月の支持率は57%にまで回復している。

2016年にスタートした小池都政は、数々の逆風にさらされた。2017年に希望の党で惨敗した小池は、攻めを捨てて守りの期間に突入 AKIO KONーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

復活の下地には「何もしないと支持率が上がる」という都政らしい現象も重なっている。

都庁は道路や公園の整備・管理から福祉に至るまで26もの局を持ち、16兆円もの予算を動かす巨大官庁だ。しかもインフラや五輪のようなイベントを除けば、多くは地味な実務の塊で、人々と直接対面する市区町村を財源や事務でサポートする仕事も少なくない。

新聞には都政などを報じる「都民版」のページがあるが、16兆円に対して各紙とも1ページのみ。一般的な感覚として都民が見ているのは国政であって都政ではないからだ。

国政ならば新聞の1面や政治面は当然のこと、国際面や経済面でも政策が扱われる。また、他の道府県の地方紙なら県政が日常的に1面、2面に上る。そのいずれと比べても、都政の報道量は規模のわりに少ない(ウェブの記事量もおおむねこれに比例する)。

「大過なければまあいいや」という都民の感覚を反映しているのだ。その証拠に、多額の血税で新銀行東京の累積赤字を補塡した石原都政でさえ、決定当時の08年3月に47%に下がった支持率が、翌年には52%に回復したのである。

以下は私の仮説だが、17年の騒動以降、知事の座からの転落の危機を感じた小池は必死にサバイバルの道を考え、「危ない橋は渡らない、黙っていよう」と肚(はら)を決めたのではないか。強みを捨てる、難しい判断だ。

仮説を補うように、ある元都庁幹部からは「われわれ職員との会食でも小池知事は全部割り勘ですよ。金の問題が出ないのが小池さんの一番の強み」という証言を聞いた。

高額な交際費支出で批判を浴びた石原慎太郎の反省に立ったのだろうが、何かが変だ。政治家の強みがダメージコントロール? 政策への情熱ではないのか? そう、小池は守り。もはや攻めていなかった。

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