「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 17時18分
その日のぶら下がり会見はわずか12分間で、医師の「コロナ診療をやらない自由」と戦うポーズは取らなかった。かつて小池は都議と都庁の「なれ合い」を批判したが、小池は自らの権力を支える勢力とはなれ合っていた。
「わが世の春」の公明党
第2の政策は、小池が2期目の「レガシー」に掲げる、「高校授業料完全無償化」だ。
小池都政2年目の17年、国の制度に先行する形で世帯年収760万円未満を対象に私立高の無償化をスタートさせ、20年に910万円未満まで枠を拡大。今年4月に全ての所得制限を撤廃している。
この政策は、もとは都議会公明党の主張だ。これを丸のみすることに都庁内では反対論が強かったが、小池が押し切った。
16年の知事選は自民党と共に敵対候補を支援した公明党だが、その年の12月に自民党と「連立解消」を宣言し、「小池都政とは是々非々」という立場を鮮明にする。
東京五輪開催も迷走しつつも実現 KIM KYUNG-HOONーREUTERS
公明党は従来から、支持母体である宗教法人・創価学会(本部・新宿区)のお膝元である東京都では、与党であることにこだわってきた。さらに新人が多い都民ファに代わって、議会運営の経験を持つ公明党の存在感は年を追うごとに大きくなった。
そして際限のないバラマキを主導するようになったのだ。
自民党と小池の関係が修復する少し前、ある都議会公明党幹部は小池批判に血道を上げる自民党都議のことを「軍鶏(しゃも)のけんかみたい」と嘲笑する一方、政策を丸のみしていく小池のことは「やりたいことなんてないんじゃない? 知事になりたかっただけの人だから」と語っていた。
腰を低くするほかない小池を前に、公明党はわが世の春を謳歌していた。
ちなみに、所得制限の完全撤廃の発表は昨年12月に唐突に今春開始が発表された。その唐突さから、国政転出と知事3選両にらみのアピールのにおいが漂った。実際、小池に長期的な時間軸を持った深い考えがあったとは思えない。
開始直後から、近隣の神奈川、埼玉、千葉の3県知事それぞれから「都が打ち出す施策に追い付くことができない」(神奈川県知事・黒岩祐治)などと苦言や不均衡への懸念の声が相次いだのは当然のことだ。
子育て世帯は東京に移住したほうが有利になり、一極集中に拍車をかける懸念がある。小池は「本来は国が責任を持って行うべき」と、またしても国のせいにしてかわしたが、ならば国に働きかけるのが先だろう。
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