「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 17時18分
考えてみると、コロナで実務を主導しないのも、質問つぶしの記者会見も、発信でなく沈黙、積極的な選択というよりは消極的な選択だ。
いずれも、「そうすることでひんしゅくを買うことがあるかもしれないが、致命傷にはならない」という計算が働いている。あえて隠蔽しなくても不都合な真実が隠れやすい都政の「地の利」を最大限に生かす。それが小池の得意技になっている。
「擦り寄る力」と3つの政策
こうした振る舞い一つを見ても、小池の2期8年は盤石でも安泰でもなかった。もちろん知事は4年の任期中は辞めさせられないが、議会に与党を形成できなければ予算も通せない。与党から首相が出る議院内閣制とは、そこが異なる。
豊洲市場への移転は迷走しつつも実現 KIYOSHI OTAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
自ら特別顧問として率いた都民ファでは過半数に届かず、復権していく自民党都連との関係修復もままならない。だからその都度、権力固めに協力してくれる「誰か」を求め、その誰かを取り込むため、彼らが望む政策を丸のみしてきた。
ここで3つの政策を示したい。
第1の政策は、初期の小池都政が力を入れ、18年に成立させた都受動喫煙防止条例だ。条例が施行されたのは20年4月。飲食店でも従業員を雇っていれば原則禁煙という、国の法律に上乗せした規制だ。小池とタッグを組んでこれを強力に推進したのは、2万人の医師が加盟する都医師会(尾崎治夫会長)だった。
開業医の利益団体である医師会は伝統的に自民党に近い。だが、小池の都民ファが議会で多数を握れるか否か最初の分水嶺だった17年の都議選に際し、いまだ自民党につくか小池につくかと各種の業界団体が戸惑うなか、いち早く小池支持に回った。
「借り」ができた相手には無理を言えないのだ、と感じたのは後のコロナ禍だ。小池は、都医師会と対峙することには消極的だった。
21年7月の第5波では再び医療崩壊が起き、病床確保に協力しない民間病院に対して都民から怨嗟の声が上がった。改正感染症法では、知事は病院に病床確保の協力要請ができた。正当な理由なく拒めば、勧告し、従わなければ医療機関名を公表する制裁措置もできた。
ところが、あれだけ世論に敏感な小池なのに、協力要請を出したのは感染の勢いが鈍化し始めた8月23日になってから。悪目立ちしないよう、わざわざ厚労省に赴き、「都は国と一緒に要請した」という形を取った。
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