「劇場型政治家」小池百合子の限界...頼れる誰かに擦り寄る力と「丸のみ」にした3つの政策
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 17時18分
知事と自民党の間で重要な役割を果たしてきた前出の元江東区長、山﨑孝明親子による、都立ゴルフ場の利用回数を記録した文書を公開請求したが、「存在しない」と明記した非開示決定が2カ月後に届いた。
私は既に、庁内で回覧され小池も見た資料の一部を入手しており、この決定通知は嘘である。
小池劇場の終わりの始まり
冒頭のインタビューで乙武は、小池と都民ファ都議の関係について、「これも良い意味で意外なんですが、小池さんって人望があるんです。〈頼られている〉じゃなくて、好かれているんです」と語っていた。
ごますりで言っているのではない。私は現職の都庁幹部からも、「小池知事って魅力的な人」というセリフを聞いた。小池は、距離を縮めた者には惜しむことなくその愛嬌を振りまき、その相手をとりこにする魅力があるようだ。
想像をたくましくすれば、とりこになった者は「小池を独占したい」という欲に駆られるだろう。都知事という絶対的な権力者が相手なら余計に狂おしい。だが当の小池は次々と「頼れる誰か」を取り換える。取り換えた誰かと取り換えられた誰かが敵同士なら、後者は苦しむはずだ。
そこまで考えてハッとしたのは、小池の学歴詐称疑惑の真相を暴露した「元側近の爆弾告発」と題した手記を4月に文藝春秋5月号に発表した弁護士の小島敏郎のことだ。小島は6月18日、小池を公職選挙法違反の疑いで刑事告発した。
かつて小池の最側近として豊洲移転の見直し・築地再整備プランを打ち立て、小池に代わって市場の現場や都職員と対峙した小島に対しても、小池は当初は愛嬌を振りまいたはずだ。だが小池は次第に距離を取り、豊洲移転の本格実施に舵を切る。
17年9月には小島は特別顧問を退き、都民ファの政務調査会事務総長に就いたが、翌月には希望の党が総選挙で大敗。小池がかつて小島と一緒ににらみつけていた都庁幹部たちを頼り始めるのは、その頃からだった。
小島の目に「かつての小池の魅力」は今、どう映っているのか(取材依頼に対し、返答はなかった)。
「古い都議会にいじめられている」という演出から始まった小池都政は、公明党に頼り、次に自民党におもねって、ついに安定した権力を獲得したかに見える。
だが、そのために決めてきた椀飯(おうばん)振る舞いの帳尻は本当に合っているのか。思い付きで繰り出した政策は、持続可能なのか──。
都庁組織は疲弊し、もはや正しいことを具申し、いさめる官僚の存在感は失われつつある。健全な緊張関係を失った行政が腐るのに時間はかからない。機会主義者であることによって獲得してきた権力の拡大は、早晩限界を迎える可能性がある。
仮に3度目の当選がかなったら、権力の階段を上ってきた小池百合子の物語は最終章に入る。
今回の3選出馬は、国政に転じてポスト岸田に名乗りを上げるという、別の筋書きを放棄する選択だった。実際、15区補選に小池出馬の可能性も取り沙汰されていた。
はっきりしたのは今年2月半ば、小池は乙武に「チャレンジする意思はありますか」と聞いた瞬間ということになるが、その少し前の2月2日、小池は官邸に岸田を訪ね、30分間も話している。
官邸スタッフは「都の予算のアピールをしていましたよ。わざわざ何をしに来たのかなと思った」と語る。岸田の目をのぞき込んだ小池は、そこで何かを見極めたのだろうか。
遠からず総選挙は行われるが、今後、小池がそこに出るには知事辞職が前提になり、「投げ出し」批判は免れない。守りの政治の蜜の味を知った彼女にそんな選択ができるとは、私には思えない。
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