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「銃規制は死んだ...」3Dプリンター銃「FGC9」開発者の正体が判明、謎の死と痛ましい「素顔」に迫る

ニューズウィーク日本版 / 2024年8月1日 15時35分

確かに衝撃的ではあったが、銃としては実用性も信頼性も低かった。1発撃つたびに弾丸を再装塡しなければならず、発射時の圧力で本体が壊れやすかった。銃のデザインに課題が多く、3Dプリンターもまだ普及していなかった。

その後、20年春にFGC9が登場し、3Dプリンター銃の脅威が一気に高まった。9ミリ口径弾を連射できる半自動小銃をDIYで手軽に作れるようになったのだ。

銃規制に関連する部品は必要なく、約80%を標準的な3Dプリンターを使ってプラスチックから作り、残りの金属部分は汎用品のスチール製チューブやスプリングで対応できた。

オープンソースの設計図はマニアが集まるチャットルームで共有され、イケアの家具のように詳細な組み立て説明書が付いていた。

以来、FGC9は世界中で使われるようになり、銃愛好家や組織犯罪者、反乱分子、テロリストに選ばれている。

FGC9の開発者はチャットルームで「Jスターク(JStark1809)」と名乗り、素人が作るなら8日かかるだろうと語った。1年後には改良版のMk IIを発表。

匿名のインタビューで、設計図を公開して自由に共有できるようにしたことにより、「われわれは銃規制を永遠に葬り去った......銃規制は死んだ、われわれが殺した」と豪語した。

コディー・ウィルソンも登場するドキュメンタリー「No Control」(2015)

野放しになる「ゴースト銃」

22年5月にイギリスのブラッドフォードで警察官が不審な乗用車に停止を命じ、車内からFGC9が1丁見つかった。運転していた男と2人の共犯者は闇市場で3Dプリンター銃を販売していた。

共犯者の家からFGC9の多くの部品も見つかった。翌年、3人は犯罪グループに3Dプリンター銃を供給しようとした罪で5~18年の禁錮刑を言い渡された。

フィンランドでは昨年、ネオナチの男3人がテロ行為を意図して銃器を製造・使用した罪で実刑判決を受けた。彼らはFGC銃をプリントして組み立て、移民家族の郵便箱を撃つ動画をネットに投稿していた。

現在、FGC銃が最も広く使われているのはミャンマーだ。軍事政権と戦う反政府勢力は、FGC9や銃身が長いタイプを、戦闘員が何十丁も製造して使っている映像を公開している。これらを政府軍への奇襲攻撃に使い、より高性能の従来型銃器を兵士から奪っている。

手軽に作れて追跡困難な「ゴースト銃」はミャンマーなどの民兵組織にも浸透している THIERRY FALISEーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

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