「銃規制は死んだ...」3Dプリンター銃「FGC9」開発者の正体が判明、謎の死と痛ましい「素顔」に迫る
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月1日 15時35分
Jスタークもウィルソン同様、武器所持は普遍的人権であるというイデオロギーに突き動かされていた。彼は19年、軍事関連の情報を提供するネット団体コマンドー・ブログとのインタビューで次のように説明している。
「われわれが目指しているのは世界中の誰もが銃や弾薬を製造できるようにすること──政府が何と言おうが、どこでも武器を所持できるようにすることだ」
Jスタークは3Dプリンターによる銃の製造を仕掛けるグループチャット「ディターレンス・ディスペンスト(分散された抑止力)」を立ち上げ、17年の3Dプリンター銃シューティAP9をベースに独自の銃の開発に着手。
20年3月、彼が3Dプリンターで自作した半自動小銃FGC9がオンラインでリリースされ、3Dプリンター銃の転機となった。
FGC9は金属製部品も規制に引っかからないように設計されていた。オンラインで購入し、銃身や遊底(ボルト)など圧力がかかる部品に転用することができた。
これは単なる技術革新の域を超えていた。FGC9とその生みの親は3Dプリンター銃というニッチの世界で文化現象になった。Jスタークは短編ドキュメンタリーで紹介され、銃所持をめぐる断固とした見解を披露して信奉者を獲得した。
ヨーロッパで流通する不法3Dプリンター銃についてのドキュメンタリー「Plastic Defence」(2020)
「匿名」掲示板に手がかりが
Jスタークは身元がばれないよう細心の注意を払っていた。ごくまれにカメラの前で取材に応じても、マスクとサングラスは欠かさなかった。
それでも21年秋、独ニュース週刊誌シュピーゲルが「成長し続ける闇の自作銃コミュニティー」を探る記事を掲載。その中にディターレンス・ディスペンストの「ジェイコブ・D」のインタビューがあり、彼がその年の夏に死んだことも明らかになった。
同誌によれば、彼は28歳のクルド系青年で、警察に身柄を拘束されたときはドイツ南西部のフェルクリンゲンで暮らしていたという。
「当局は数カ月に及ぶ捜査の末、21年6月下旬、強制捜査に踏み切った。彼のアパートで3Dプリンター1台、複数の携帯電話とHDD、パソコン1台を発見したが、武器は見つからなかった。ジェイコブ・Dは釈放された」
しかしその2日後、彼がハノーバーに住む両親の自宅前に止めた車の中で死んでいるのが発見されたらしい。記事によれば、司法解剖の結果、死因は特定できなかったが、他殺・自殺の可能性は排除されたという。
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