「銃規制は死んだ...」3Dプリンター銃「FGC9」開発者の正体が判明、謎の死と痛ましい「素顔」に迫る
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月1日 15時35分
またこの2つのサイトでは、彼は本名を明かしていた。ジェイコブ・ドゥイグだ。
最終的に私は、ドゥイグが長年にわたり4chanその他の掲示板に匿名で書き込んだと思われる何百ものコメントを見つけた。彼はドイツでの生活やドイツ軍入隊後の日々のこと、インセルである自分の孤独や絶望について語っていた。
そこから浮かび上がるのは複雑で情緒不安定な、思い込みの強い、痛ましい男の素顔だった。過激な思想の持ち主であることもうかがわれた。
これらのコメントは、彼がJスタークとしてインタビューで語っていたこととは驚くほどギャップがあった。インタビューではナチスのユダヤ人大虐殺や中国のウイグル人問題に触れ、誰でも弾圧から身を守るために武装する権利があると主張し、そのためにFGC9を開発したのだ、と語っていた。
非モテをこじらせた孤独な素顔
だが4chanなど匿名掲示板への書き込みを見ると、人権意識はどこへやら、排外主義や人種差別、反ユダヤ主義的な物言いが目につく。
さらに目立つのは女性蔑視的な発言だ。男性の抱える問題の大半は女性のせいだと言わんばかり。インセルにありがちな女性への憎悪がにじみ出ている。自分は見た目や人種、身長でハンディがあるし、自閉症だから女性にモテないと、彼は嘆く。このままでは一生独りぼっちだ、と。
それはドゥイグがFGC9の開発者として表で見せる顔とは全く違う一面だった。後に分かったことだが、彼はインセルの世界でさまざまなハンドルネームを使い分けていた。
インセルをテーマにしたポッドキャストの番組では、自閉症とメンタルヘルスの問題があるから女性と恋愛関係になれないと語っていた。
一方で民族的ルーツも気にしていたらしく、「白人と見られる外見」なら少しはモテただろうに、と投稿してもいた。
音楽共有サイト・サウンドクラウドのプロフィール欄でドゥイグは「ごく普通の音楽好きの青年」の顔を見せていた。 SCREENSHOT FROM SOUNDCLOUD
インセルがネット上のコミュニティーでぶちまける女性蔑視や女性憎悪は、現実の世界で暴力として噴き出す危険性がある。
この手の事件をメディアが初めて大々的に報じたのは14年5月。カリフォルニア大学サンタバーバラ校近くで、女性への報復を誓うエリオット・ロジャーが通行人などをナイフで刺すか銃撃し、6人を殺害した事件だ。
その4年後、カナダのトロントで25歳のアレック・ミナシアンがフェイスブックでロジャーをたたえ、「インセルの反逆は既に始まっている!」と宣言。車を暴走させて通行人を次々にはね、11人を死亡させた。
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