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「それが中国流のやり方だ」北極圏でひそかに進む「軍民両用」研究の実態...ロシアとの接近、核持ち込みの懸念も

ニューズウィーク日本版 / 2024年9月5日 17時17分

ニーオルスンにある中国の北極観測センター「黄河基地」には、年内にさらに50人の研究者が赴任する予定 XINHUA/AFLO

「私たちは中国の参入を全く予想していなかった」と、米コーネル大学のグレゴリー・ファルコ教授(航空宇宙技術)は言う。「新参プレーヤーの登場で北極圏の緊張は一段と高まりつつある」

中国政府は北極圏での自国の活動は平和的なものだと主張している。ノルウェーの首都オスロの中国大使館広報部は本誌のメール取材にこう回答した。「軍民両用研究を行っていると関係国が騒いでいるが、根拠はゼロだ。『自分にやましいところがあるから他者を疑う』式の言いがかりではないか」

中国の北極観測センター「黄河基地」内部 XINHUA/AFLO

だが、米政府は北極圏における中ロ両国の動きを警戒している。米国務省が1994年に閉鎖したノルウェー領北極圏の出先機関を昨年再開したのも対抗措置の一環だろう。今年3月には米国土安全保障省の科学担当の高官がスバールバルを訪れた。

ノルウェー政府は5月に文書を発表し、スバールバルにおける主権を改めて主張。軍民両用研究のリスクを指摘し、一部の国の活動に懸念を示したが、国名は挙げなかった。

ノルウェーのアイビン・バード・ペーテルソン外務副大臣は本誌に対し、「スバールバルでは外国の軍事活動は一切禁止されている。そのような活動をすれば、わが国の主権を侵害したと見なされる」と語った。

軍事研究に特化した実態隠す

中国はこうした規制に異議を唱えたことがある。中華民国時代の1925年に加盟したスバールバル条約を盾に、この諸島における「研究調査の自由」を認めよとノルウェー政府に迫ったのだ。

ノルウェーは気候など自然科学と一部の文化遺産の研究に限り、外国人研究者の活動を認めるという立場を崩していない。

白夜の季節が終わり、4月末に中国人の先発組3人が黄河基地に到着した。基地を率いる胡正毅(フー・チョンイー)は国営英字紙チャイナ・デイリーに、自分たちの任務は「雪氷学、地上と海洋の生態学、宇宙空間物理学分野の研究と運用調査」だと語った。

宇宙空間物理学は中国電波伝播研究所(CRIRP)が力を入れる分野だ。ノルウェー政府スバールバル研究管理部門(RiS)の公式サイトは、CRIRPが2030年までスバールバルで取り組む2つの研究を紹介しているが、CRIRPの名称だけでは組織の実態は分からない。

本誌はCRIRPが中国最大の国有の軍用エレクトロニクス複合企業・中国電子科技集団(CETC)傘下の研究所であることを突き止めた。この研究所はCETC内では第22研究所と呼ばれているが、公式サイトに掲載された写真などからCRIRPであることが確認できた。

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