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アメリカ人の7割超が1度は貧困に陥る...「貧困は縮小している」という政府の統計とは異なる現実

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月9日 9時16分

貧困層にとって食料・古着支給イベントやフードスタンプが使える店は貴重な存在。写真は毎週催される宗教団体主催の食料・古着支給イベント(ウェストバージニア州) SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

マーク・ランク(ワシントン大学セントルイス校教授〔社会福祉〕)
<政府が定める貧困の定義に該当する人は11.1%で、22年の11.5%から微減となった。ところが、別の貧困指標は正反対の結果を示す>

米国勢調査局が9月に発表した所得と貧困に関する報告書によると、2023年にアメリカで貧困状態にあった人は約3680万人で、前年よりもわずかに減った。貧困率も微減になった。ところが別の貧困指標では、生活が苦しく、貧困下にある人は増えている。

これは一体どういうことなのか。最新の貧困統計とアメリカの貧困について、ワシントン大学セントルイス校のマーク・ランク教授(社会福祉)に話を聞いた。

◇ ◇ ◇

──今回の報告書で一番の驚きは?

最も興味深いのは、2つの貧困指標が正反対の方向性を示したことだと思う。まず、政府が定める貧困の定義に該当する人は11.1%で、22年の11.5%と比べると微減した。つまりアメリカの貧困はわずかに縮小したことになる。

ところが、政府の支援策などの影響を調整した補助的貧困率(SPM)は12.9%で、22年の12.4%と比べると上昇した。つまり、わずかだが貧困は拡大したことになる。

伝統的な貧困率が下がったのは、世帯所得が穏やかな増加を示したこと(物価上昇分を差し引いてもそうだった)が大きかった。

ただ、多くの貧困専門家と同じように私も、補助的貧困率のほうが実態を正確に示していると思う。これは11年に導入された指標で、消費支出だけでなく、税額控除や政府の貧困削減策の影響を調整した上での貧困レベルを示している。

23年に補助的貧困率が上昇した大きな理由の1つは、社会保障給付とフードスタンプ(政府発行の食料クーポン)のおかげで、貧困の定義に該当しなくなった人が、前年よりも減ったためだ。また、医療費の自己負担が増えたことも影響した。

苦しい生活を支える、フードスタンプが使える店(ニューヨーク州) SCOTT HEINS/GETTY IMAGES

──アメリカの貧困をもっとうまく測定する方法はあるのか。

国勢調査局の報告書は、ある年の貧困状態を明らかにするにすぎない。それよりも、典型的なアメリカ人が一生の間で貧困に陥るリスクを推測するほうが有意義だと思う。

そこで私は、ミシガン大学の研究チームの協力を得て、全米各地の典型的な世帯の経済状態を1968年からずっと追跡してきた大規模データセットを使って研究をした。その結果、アメリカ人の過半数が、成人後に少なくとも1年は貧困を経験することが分かった。

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