東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月9日 17時50分
私はお母さんに聞いた。「今は毎日、何をしていますか」
彼女は「ちょっと待ってください。あなたに見せたいものがあります」と言った。
彼女はテントの中に入り、再び出てきたときには手にビニール袋を持っていた。中には色とりどりのとてもきれいな巾着袋がたくさん入っていた。これらの巾着袋はすべて彼女が一針一針縫ったものだと言った。
普段は毎日午前中、デパートが開くと同時に入っていくという。目的は買い物ではなく、デパートの中で席を探して座り、数時間でこの小さな巾着袋を縫っているそうだ。
興味のある人はお母さんのそばで見ていて、縫製技術を教えてほしいと言う人もいれば、お母さんの巾着袋を買いたいと言う人もいた。
お母さんはコスト分だけをもらって売ったことがある。彼女は1個の小さな巾着袋を縫うのに約3時間以上かかる。小さな巾着袋1つの材料費は、500円ほどになるそうだ。
私はお母さんに言った。「はい! わかりました。お母さんの物語を書いて、友人など多くの人に読んでもらい、巾着袋を1000円で売り込みます」
お母さんは慌てて、「1000円で売るのは高すぎませんか?」と言った。
私は答えた。「材料費は500円で、それに3時間の手間賃を加えると、1000円は高くありませんよ。私は先に10個を購入して売ってみますから、今すぐに1万円を前払いしてもいいです」
お母さんは承諾して、「申し訳ありません」と言ってくれた。
お母さんは自分で縫った小さな巾着袋を取り出し、木の板でできた机の上に並べた
お母さんの「愛の巾着袋」が次々に中国人に売れた
今回お母さんと再会して、私は彼女の波乱の人生経験についてもっと多くの理解を得た上に、お母さんの生活を支援し、将来の人生に希望を持たせられる道を見つけた。
喜ばしいことに、私が「モーメンツ(微信〔WeChat〕の情報共有機能)でお母さんの「愛の巾着袋」の「代理販売」を発表した初日に、10個の巾着袋はすべて、ある中国人の女性が買ってくれた。
その後、その女性は中国に帰省し、小さな巾着袋は向こうの親戚や友人にプレゼントしたという。彼女の後にも、もう1人の男性と2人の女性が私を通じて9つの小さな「愛の巾着袋」を買ってくれた。思いやりのある彼らに、心から感謝の意を表したい。
一方、お母さんと知り合ったことは、私の生活にまた心配事を増やすことにもなった。
特に台風が襲来した際に私が最も心配しているのは、お母さんを含む、荒川河川敷の森に住むホームレスの友人たちの安否だ。
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