迫るロシア軍からドネツク州ポクロフスク近郊で、大規模な避難活動...東部戦線の「ターニングポイント」に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 9時28分
そんな状況で覚悟を決めているのか、あるいは慣れたのか、平然とした住民がいる。こちらもできる限り状況に慣れようと、平静を保つよう心がけた。
救出されてきた人が10人程度集まると、待機していた数台の車両に荷物を積み、身分証をチェックして写真を撮り、それぞれ乗り込んでバスが待機するポクロフスク中心部へと運ばれる。この日は25人前後がヘルニャックから避難してきた。
心動かされてシャッターを切る
救出団体チルドレン・ニュージェネレーションのメンバーで、ポクロフスク市セリドべ出身のフェディール・シロバツキーは言う。
「戦争が続いているので、国内の安全な場所に人々を避難させる必要がある。われわれのホットラインへ依頼があれば、ドニプロ市の一時避難場所に移動させる。その後、希望する全員に宿泊施設を提供する。避難を望んでいる人がいる限り、私たちはこの活動を続けるつもりだ」
9月11日も前日同様、クラコバでヘルニャックから救出されてくる人々の取材をしていた。この日、私はボランティアの1人に「ヘルニャックへ同行させてほしい」と頼んだが、即答で断られた。もしメディアや外国人を同行させて事故があった場合、同行させたウクライナ人が責任を問われる。無理強いはできない。
だがその日最後のヘルニャックへの車が出発しようとした時、ボランティアが「早く車に乗れ」と声をかけてくれた。
「危険すぎてもう村の中には入れないので、今回は村の外れで住民を乗せた車両と待ち合わせをしている」とのこと。そこまでなら大丈夫ということらしい。
クラコバから北東に20分程度でヘルニャックの西の端の待ち合わせ地点に到着した。車を止めて1分もしないうちに猛スピードで1台の白いバンが近づいてくる。こちらの車両を少し追い越したところで急停車。車のドアが開くと、数人が駆け降りてきて荷物を降ろし始めた。
そして車内から数人が降りてきた。西日を背に粛々と車へと乗り込む。その光景に見とれ、気付いた時にはもう出発だった。
救出活動の最前線ヘルニャックでの滞在時間はわずか2分。その間に撮影した写真は数カットだけだったが、本当に心動かされてシャッターを切った。
9月12日、ボランティアのフェディールが支援物資を持っていくというので、防弾ガラスを貼り装甲された車両に同乗して、ロシア軍があと2~3キロまで迫っているセリドベに向かった。
8月末に訪れた際は、危険とはいえ人通りもあり、営業中の店もあった。
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