迫るロシア軍からドネツク州ポクロフスク近郊で、大規模な避難活動...東部戦線の「ターニングポイント」に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月11日 9時28分
だが改めて訪れた町は主要な建物が破壊され、道路にバリケードが張り巡らされていた。この日は特に砲撃音が激しく、どちらのものか不明なドローンが上空を絶えず行き交い、通り過ぎてしばらくするとドローンを狙う機関銃の音が響いてきた。
ポクロフスクに迫る砲撃音
このようにとても危険な状況の中、物資を届けるのはなぜなのか。フェディールは言う。
「2日に1度、朝のうちにパンや水を届けている。町には2000人くらいの人が残っていて、みんな何らかの理由があり避難をしようとはしないんだ。だから自分が必ず食料や水などを届けている。皆が私のことを待っている」
ウクライナ軍の善戦でポクロフスクは持ちこたえ、9月末の時点でも避難活動は続けられていた。
救出のボランティア活動に参加している日本人で、ウクライナの子供たちを直接支援する活動を続ける一般社団法人ウスミシュカ(ウクライナ語で笑顔の意味)の中條秀人氏によれば、ポクロフスクの中心部まで砲撃音がかなり近づいていた。
ドニプロへ向かうバスが待機している場所からも大きな黒煙が見えるような状況だった。
「ここにきて避難を決断する人たちもいて、依然救出活動は続けられていますが、ウクラインスクやセリドベにはもう行けなくなりました」と、中條氏は言う。
「今はドニプロでの受け入れ先の確保や準備も大変になっており、簡易的にベッドを廊下に並べて寝てもらっています。ドニプロまで避難をしてきても、決して安全とは言えません。どうやら電波塔が狙われているらしくミサイル攻撃を受けています」
ポクロフスクの避難活動が始まった8月20日から取材し、拠点のクラマトルスク〜ポクロフスク〜ドニプロ間の約250キロを車で何度も往復した。その間に多くの避難民を見たし、避難をせずに残り続ける人たちにも会った。
その傍らで前線地域に行き、救出や避難を助ける多くのボランティアの姿を目撃もした。
どの立場であれ、彼らの選択と行動は尊重されるべきだ。どこにいても、その身の安全を案じてやまない。
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