米大統領選も終盤へ「10月には魔物がいる...」歴史を変えてきた決戦前夜の大逆転は今回も起きるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月17日 20時30分
もちろん「ハリスには、まだ何かがあるかもしれない。しかし最も可能性の高いサプライズは、有権者の現政権への評価に悪影響を与えるような緊急事態が起きることだろう」。
18年の中間選挙では民主党の躍進を、20年にはバイデンの勝利を正確に予測した政治戦略家レイチェル・バイテコファーに言わせると、今回のサプライズは10月ではなく、既に7月に起きている。つまり、バイデンからハリスへの候補者交代だ。
「あれですっかり流れが変わった。この流れをさらに変えるような事態は想像できない。ハリスの僅差の優位は続くだろう。明日にでも第3次世界大戦が起きれば話は別だが、それはないと思う」
ビル・クリントンの2度の大統領選に携わった民主党のベテラン戦略家マット・ベネットも、ハリスが候補者になって以降は世論調査の結果が安定していることを踏まえ、「仮に大きな事件が起きても」大勢に影響はないだろうとみる。
「何か大きな地政学的変化があっても、それはトランプの手柄にもハリスの責任にもならないし、そもそも有権者の関心はそこにない」とベネットは言う。
「イラン米大使館人質事件や株価暴落といったオクトーバー・サプライズが効いたのは、それが国民に具体的な衝撃を与える出来事だったからだ」
それでも、トランプの妻メラニアが意外なサプライズとなる可能性はある。10月8日に出た回顧録『メラニア』で、彼女は「女性は政府からの介入や圧力を受けることなく、自分自身の信念に基づいて出産するかどうかを決める権利を保障されなければならない」と書いている。
トランプの指名した最高裁判事らは人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆して中絶反対派を喜ばせた。だが最近のトランプは、連邦レベルの中絶禁止に消極的な姿勢も見せている。
メラニアの発言は「トランプの選挙運動に複雑な影響を与える可能性がある」と言うのは、フロリダ・アトランティック大学のクレイグ・アグラノフ教授(政治マーケティング論)だ。
女性の中絶権を明確に認めたメラニアの立ち位置が「助けになるか障害になるかは、この問題に関するトランプ陣営の終盤戦での対応次第だ」とも言う。
歴代の「サプライズ」事例
「オクトーバー・サプライズ」という語を世に出したのは、1980年の大統領選でロナルド・レーガン陣営を仕切っていたウィリアム・ケーシーだ。
ライバルで現職のジミー・カーターが再選を確実にするため、在イラン米大使館に捕らわれている人質の解放を土壇場で発表するのではないか、そうなればすごいサプライズだ。ケーシーはそう言った。
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