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勝敗を分ける250万のムスリム票の行方、激戦州ミシガンには「8万2000人以上のレバノン系米国人」

ニューズウィーク日本版 / 2024年10月25日 18時49分

ホワイトハウスの前でガザでの停戦を求めて祈りをささげるパレスチナの支援者 KENT NISHIMURA/GETTY IMAGES

ジョシュア・レット・ミラー(本誌調査報道担当)
<ガザとレバノンの殺戮を見てイスラエルへの不満が高まるが、ムスリム票も、ユダヤ人票も失いたくない民主党ハリスの難局>

ほぼ250年前にアメリカ合衆国の独立宣言が発された町フィラデルフィアに、サイフ・イクバルは暮らしている。

イスラエル軍がハマスやヒズボラに爆弾の雨を降らせているのは1万キロも離れた遠い場所だ。でも、と29歳のイクバルは思う。カマラ・ハリスよ、イスラエルから距離を置いてくれ。そうでないと、あなたに一票を投じられない......。

イクバルは筋金入りの民主党員だ。前回の大統領選ではドナルド・トランプを落とすための活動に精力的に加わった。でも今回は、まだハリスを支持する気になれない。

4年前には、全米のムスリム(イスラム教徒)有権者の86%がジョー・バイデンを支持し、トランプ支持はたったの6%だったという。

だが今回は違う。250万を超えるムスリム登録有権者の多くが、ガザ戦争に対するハリスの姿勢に懸念を強めている。実際、3つの激戦州では緑の党の候補ジル・スタインがハリスよりも多くのムスリム有権者の支持を集めている。

「あの露骨な人権侵害をアメリカは金銭面で支えており、現政権には本気で対処するつもりがない。そう見えるから、みんな不満なんだ」。イクバルは本誌にそう語った。

パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸、さらにはレバノンへと戦火が拡大するなかでも、イスラエルを外交的にも財政的にも軍事的にも支援するアメリカ政府の姿勢は変わらない。これではムスリム有権者の「立場がない」とイクバルは嘆く。

ガザ地区ラファで埋葬されるパレスチナ人の大量の遺体 AHMAD HASABALLAH/GETTY IMAGES

激戦州に潜む2つの票田

全米に約600万いるユダヤ系有権者の立場も苦しい。ただし彼らの多くは中東の戦争より米国内の問題を重視しており、トランプになびく気配はほとんどない。

しかし激戦州のノースカロライナとペンシルベニア、ジョージアでは、ムスリムとユダヤの票が勝敗を左右しかねない。4年前にはバイデンがこのうち2州を制した。ただしジョージア州での票差はわずか1万1700。8万人近いムスリム有権者に見放されたら、今度は勝てない。

「最終的に決めてはいないが」とイクバルは言った。「このままなら、私はジル・スタインに入れる」

フィラデルフィア在住でムスリムの黒人女性アリヤ・カビル(45)はハリス支持だが、現政権の中東政策には反対だ。

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