勝敗を分ける250万のムスリム票の行方、激戦州ミシガンには「8万2000人以上のレバノン系米国人」
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月25日 18時49分
「この国の二大政党制はもう信用できない。そして今度の選挙では民主党が最悪だ」と言ったのは、ディアボーン・ハイツに住むアリ・ダバジャ(43)。「私たちの懸念や願いに応える人間味のある声が、あの党からは聞こえてこない」
中東における戦火の拡大は、ダバジャにとってすぐれて個人的な問題だ。去る9月23日にレバノン南部ビントジュベイルを襲ったイスラエル軍の空爆では、ダバジャの親族5人が殺されている。
「これはアラブ系の、ムスリムのアメリカ人にとって、つまり私たちの大多数にとって重要な節目だ」とダバジャは言う。
「大量虐殺は取り返しがつかない。巨大なバンカー爆弾は取り返しがつかない。ああいうのは私たちの仲間を皆殺しにしてしまう」(なおイスラエル側は、自分たちの攻撃は「大量虐殺」に当たらないと主張している)。
バイデンやハリスが中東外交で「強気の姿勢」を示す、と口にする一方、レバノンにいるヒズボラ指導部を標的にするイスラエルへの支援を変えないのはおかしい、ともダバジャは言う。
ちなみにヒズボラはイランを後ろ盾とする強力な民兵組織だが、その最高指導者ハッサン・ナスララは去る9月27日にイスラエルの空爆によって殺害され、これを機に中東の戦火はさらに拡大した。
民主党には「一貫性がない」とダバジャは見る。
「バイデンやハリス、そして民主党の人たちに言いたい。あなた方の政策、とりわけパレスチナとレバノンにおける大量虐殺(の黙認)はアキレス腱であり、イスラエル支持を続ければ続けるほど、民主党にとってもアメリカにとっても危険なことになるのだと」
ダバジャもまた、緑の党のスタインに投票するつもりだ。そしてイスラエル支持を続ければ国際社会におけるアメリカの地位に傷が付き、ひいては安全保障上のリスクにもつながると警告した。
「あの頃は人間性が欠けていたと歴史の本に記されるような事態を、いま私たちは目にしている。実際、今の私たちはアメリカ社会の一員だと感じられない。人間としての存在を奪われ、認知されていない」
全米のムスリム有権者を対象とした世論調査を見ると、ハリスとスタインの支持率はほぼ互角の29%で、トランプは11%。ただし16.5%は未定と答えている。
スタインは「ガザの大虐殺」を終わらせると公約しており、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシンの3州にいるムスリム有権者の間ではハリスよりも高い支持率を誇る。ただしジョージア州とペンシルベニア州のムスリム社会では、ハリス支持がスタイン支持を上回っている。
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