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グローバル企業が「人材をかき集めている」...最強の学問「行動経済学」が、ここまで注目されているワケ

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 18時19分

さらには、お客様にとって一番ラクな選択肢である「電話」をデフォルトにすると、お客様の意思決定の負担が減らせます。これは「デフォルト効果」を活用したもの。資料も、不要な情報が多すぎる「情報オーバーロード」の状態なら、絞り込むようにアドバイスしています。

人間は一日に3万5000件もの意思決定をしているといわれています。GAテクノロジーズのお客様はお忙しい方が多い。だから、意思決定の負担を少しでも減らせるよう、アプリのUI一つとってもきめ細やかに行動経済学の知識を活用しています。

『行動経済学が最強の学問である』著者の相良奈美香氏(本人提供)

「システム1」の思考モードが「ジェンダーバイアス」の罠を生む

──想像以上に色々な場面で行動経済学が活かせるのですね。ご著書では、サステナビリティやDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)といったトレンドに行動経済学が応用されているとありました。DEIの促進に効果がある事例を教えてください。

アメリカでは、採用で「カテゴリー化のバイアス」をできるだけ避けるために、顔写真なしの履歴書が一般的です。見た目がよい方に「ハロー効果」が働いて、「仕事もデキそうだな」と思ってしまうかもしれない。また、男性か女性かが写真から推測できると、「ジェンダーバイアス」がかかりやすくなってしまいます。意識が高い会社だと、書類審査で名前も伏せています。名前から性別や人種を推測してバイアスに陥るのを防いでいるのです。

本来、見た目はビジネスのパフォーマンスには関係ないですよね。だから、カテゴリー化やジェンダーのバイアスを、採用のような大事な意思決定で最小限にし、ダイバーシティ実現に寄与することをめざしています。そのために大事なのは、人間にはバイアスがあると自覚することです。

──こうした認知バイアスがかかっているとき、行動経済学上、私たちの思考はどんな状態になっていると考えるのですか。

人間の情報処理では、「システム1」と「システム2」という2つの思考モードが使い分けられています。「男性はこう、女性はこう」と考えているときは、直感的で瞬間的な判断である「システム1」を使っている状態。だから、意識的に、注意深く時間をかけた判断の「システム2」に切り替えることが必要です。

私たちは、性別を聞かれると、「女性はこういうタイプの仕事には向いてないのかな?」と男女に紐づけやすくなってしまう。これを「プライミング効果」と呼びます。さらには、たまたま女性が失敗しただけで、「やはり女性はこの仕事に向いていない」と結びつけてしまうことも。これは「確証バイアス」が働いている状態です。

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