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グローバル企業が「人材をかき集めている」...最強の学問「行動経済学」が、ここまで注目されているワケ

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 18時19分

そのほか、参照点依存性もこの理論が示す特徴の1つ。私たちは意思決定の際に、絶対的な価値ではなく、ある参照点をもとに評価する傾向にあります。たとえばボーナスが90万円と思っていたのに100万円だったら自分の期待を上回るので満足度が高くなる。一方、110万円と期待していて100万円だったら満足度が低くなるんです。

この功績は、ダニエル・カーネマンの2002年のノーベル経済学賞受賞にもつながりました。プロスペクト理論で、人間が必ずしも合理的な意思決定をするわけではないことが、世の中に広まっていった。本当にすごい論文だなと思いましたし、大学院生の頃は、論文の用紙がボロボロになるくらい何度も読み返しましたね。

──最後に、行動経済学の面白さを改めて教えてください。

行動経済学の面白さは、人間の心理が複雑であるゆえに、常に多種多様なケースに向き合えること。先ほど「性別を尋ねるだけで試験の結果が違う」ことを示した実験を紹介しました。この発見に至るには、実験の時点で、「最初に性別を尋ねるかどうかでジェンダーバイアスが影響するかもしれない。だから対照実験が必要ではないか?」という観点に気づく必要があります。まさに、行動経済学の知見を総動員することが求められます。

ビジネスの現場は、色々な条件が統制された研究室での実験以上に複雑な環境です。その分、新たな発見に満ちているのが、行動経済学をビジネスに応用する面白さでもありますね。

相良奈美香(さがら なみか)

「行動経済学」博士。行動経済学コンサルタント。

日本人として数少ない「行動経済学」博士課程取得者であり、行動経済学コンサルティング会社代表。

オレゴン大学卒業、同大大学院 心理学「行動経済学専門」修士課程および、同大ビジネススクール「行動経済学専門」博士課程修了。デューク大学ビジネススクール ポスドクを経て、行動経済学コンサルティング会社であるサガラ・コンサルティング設立、代表に就任。その後、世界3位のマーケティングリサーチ会社・イプソスにヘッドハントされ、同社・行動経済学センター(現・行動科学センター)創設者 兼 代表に就任。現在は、ビヘイビアル・サイエンス・グループ(行動科学グループ、別名シントニック・コンサルティング)代表として、行動経済学を含めた、行動科学のコンサルティングを世界に展開している。

まだ行動経済学が一般に広まる前から、「行動経済学をいかにビジネスに取り入れるか」、コンサルティングを行ってきた。アメリカ・ヨーロッパで金融、保険、ヘルスケア、製薬、テクノロジー、マーケティングなど幅広い業界の企業に行動経済学を取り入れ、行動経済学の最前線で活躍。

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