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グローバル企業が「人材をかき集めている」...最強の学問「行動経済学」が、ここまで注目されているワケ

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 18時19分

こうした認知バイアスによって強化された固定観念は、他者だけでなく本人にも影響するんですよ。

ある実験では、数学の問題を解いてもらい、男女の得点差を比較しました。1つめのグループは解く前に性別を尋ねられた。もう1つのグループは何も尋ねられなかった。すると、後者のグループでは男女の得点差はなかったのに対し、前者のグループでは女性の方が男性より得点が低かったのです。

アメリカでも、「女性のほうが男性より数学ができない傾向にある」というバイアスがあります。普段はそう信じていない女性でも、性別を聞かれたことで、そのバイアスを思い出し、「どうせ私にはできないから」という感情が湧き上がってきた可能性がある、と考えられます。

「不確実性回避」をうまく防ぐ「問い方」とは?

──こうしたバイアスにできるだけ対処するためのアドバイスはありますか。

おすすめは、変化を前提にして、変化を促すことです。人間には、リスクの確率が未知な状況を避けようとする「不確実性回避」の傾向があるので、変化を嫌う面がある。だから、考え方や行動を「変わるか変わらないか」に焦点を置くと、「変わりたくない」になりがち。そこで、「AとBどちらに変わるのがいいですか」と、変化の選択肢に焦点を置いて尋ねると、変化しようという発想になりやすいのです。

ホフステードの6次元モデルによると、日本人は不確実性の回避度が高い傾向にあるとされます。ただし、一度変化すると決めたら、一斉にスピーディーに変化するんです。社会規範の力が大きいことも影響しているのでしょう。

多様性を尊重する考え方も、行動経済学の知見を活かして「変化する」と決めれば、スピーディーに変化していくのではないかと考えています。

──それは前向きな気持ちになりますね。

あとは、行動経済学は職場だけでなく、パートナーや子どもとのコミュニケーションにも活かせます。たとえば、子どもに「先にお風呂に入って」と指示するのではなく、「ご飯とお風呂どっちを先にする?」と尋ねてみる。すると、自分で決めている実感が得られ、いずれかの行動をとってくれますよ。

何度も読み返した衝撃の論文

──相良さんの価値観に影響を与えた本または論文があれば、ぜひ知りたいです。

衝撃的だったのは、1979年に行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱した「プロスペクト理論」の論文です。

プロスペクト理論とは、人が損失に対して過剰に評価する傾向を示した理論のこと。その心理的特徴の1つは「損失回避性」とも呼ばれます。1万円を得る喜びの度合いよりも、1万円を失うショックの度合いのほうが大きいというものです。

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