【本誌独占インタビュー】トニー・ブレア英元首相が語る「中東和平への道」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 16時23分
このテーマは、2つの異なる視点で見るべきだと思う。まず、パレスチナ自治区ガザやレバノン、そしてイランなど、目の前の危機に目を向けなくてはならない。そしてその上で、「中東の全体像はどうなっているか」を問う必要がある。中東に希望があるかどうかは、そうした全体像次第だからだ。
その全体像で重要なのは、中東の国々が宗教的寛容性のある社会に転換できるかどうかだと思う。宗教的寛容性のある社会とは、政治と宗教を一体化させない社会のことだ。
もう1つ重要なのは、近代的な経済を築けるかどうか。若い世代が経済面で現代世界の一員だと感じることができるようにし、ルールに基づく、活力ある経済をつくり、起業家精神の持ち主がビジネスを始めて成功できるようにするべきなのだ。
ブレアは新著で、中国とロシアの連携強化が国連の機能不全を招いているとする一方、全てを欧米の視点で解釈することの危険性も指摘している(今年5月のプーチン訪中歓迎式典) SERGEI BOBYLEVーSPUTNIKーPOOLーREUTERS
いま中東の至る所で、こうしたことをめぐる戦いが続いている。いつも言っていることだが、この点に関してはイスラムとイスラム主義を区別して考えなくてはならない。イスラムは宗教だが、イスラム主義は、宗教を政治イデオロギーに転換する考え方だ。そのような政治イデオロギーは必然的に、全体主義的で、排他的で、基本的に経済の面で遅れたものになる。
最終的には、人間の精神が中東を近代化に向けて突き動かすだろうと、私は考えている。問題は、そうした動きを後押しするために欧米ができることはあるのかという点だ。近代化を推進しようとする勢力を支援すること──それがわれわれの行うべきことだと思う。
イランの影響力も明確に認識する必要がある。(イスラム教シーア派の)イランとスンニ派のムスリム同胞団が協力し合うことなど、本来はあり得ない。ところが、欧米との戦いでは両者が足並みをそろえる。
──あなたの著書では、中国とロシアが連携を強めている結果、国連が機能不全に陥っていると記している。国連の未来はどうなると思うか。国連が以前のような影響力を取り戻すことはできるのか。
私は中国を孤立させようとしたり、中国との関わりを断とうとしたりすることには反対していた。中国には、超大国になり、世界の舞台で経済と政治の両面で影響力を振るう権利が全面的にあると思うからだ。
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