【本誌独占インタビュー】トニー・ブレア英元首相が語る「中東和平への道」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月20日 16時23分
だから私は長年、中東諸国を訪問して、「これでは(一方がもう一方を抑え付ける方法では)状況は改善しない。きちんと解決しなくてはいけない」と、多くの指導者たちに訴えてきた。
だが彼らの反応は決まって、「もうパレスチナ問題について話しに来るのはやめてくれ」というものだった。「あまりにも(解決が)困難だ。われわれにはほかにやることがある」と言うのだ。
だが、私は引き下がらなかった。「これは本当に重要なことだ。(パレスチナ問題は)この地域のさまざまな問題の原因ではなく、この地域で問題を起こしたい連中が、もっと多くの問題を起こすために利用しているにすぎないのだから」と。
この問題を解決するためには、イスラエルの人々が自分たちと隣り合って暮らしている人々を文化的に受け入れるしかない。彼らは今そうしているだろうか。
いや、イスラエル人とパレスチナ人の間には大きな断絶がある。イスラエル人はパレスチナ人を信用せず、パレスチナ人はイスラエル人を信頼していない。そのため、パレスチナ人は喪失感や屈辱感や怒りを抱き、イスラエル人は相手が自分たちを破滅させたがっていると感じている。
その結果、国境の線引きをめぐる交渉が泥沼化する。こうした状況は全て、双方が実際に受容し合っていると感じる環境をつくり出せば解決しやすくなるだろう。だが、そういう環境がなければ、これらの合意は決して長続きしないだろう。
北アイルランドのケースでは、(プロテスタントでイギリス連邦との統一維持を支持する)ユニオニストに、イギリスにとどまるならカトリック系住民も対等に扱うことを最終的に受け入れさせた。それがユニオニスト側の大きな譲歩だった。
一方、(カトリックで強硬なアイルランド統一派の)リパブリカンと(アイルランドへの統合を望む)ナショナリスト側の大きな譲歩は、北アイルランドの住民投票で過半数がイギリスからの独立を選択しない限り、北アイルランドはイギリスにとどまるというものだった。
さらに、この2点を軸に恒久的停戦状態で交渉を続けることでも合意した結果、暴力がなくなった。それでムードが大幅に改善したのは言うまでもない。合意に達することは不可能ではないのだ。
実際、国際社会のほとんどの人々は「2国家共存」が正しい解決策だと少なくとも考えてはいる。つまり、合意済みの目標はある。問題は、2国家解決策が可能だとイスラエルとパレスチナ、それに中東が考える環境をどうつくり出すかだ。それにはまずガザから着手しなければならないだろう。
この記事に関連するニュース
-
「予測不能な男の再登板」ウクライナ・ガザ・中台・朝鮮半島・・・世界の安全保障の気になる行方は?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月13日 14時16分
-
トランプ勝利が招く国際混乱…米中関係、ウクライナ戦争、中東情勢すべてが波乱含み
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月8日 9時26分
-
プーチン氏、中東「全面戦争の瀬戸際」と警告 BRICS首脳会議で
ロイター / 2024年10月25日 8時51分
-
ブリンケン米国務長官が中東歴訪、イスラエルでネタニヤフ首相らと会談(米国、イスラエル、パレスチナ、イラン、レバノン、サウジアラビア、カタール、英国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月24日 16時15分
-
シンワール殺害で終結は間近か? ガザ戦争の行方とネタニヤフの選択
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月23日 11時30分
ランキング
-
1佐渡金山、24日に追悼式=世界遺産登録で日韓政府参加
時事通信 / 2024年11月20日 18時56分
-
2イスラエル軍、徴兵に応じないユダヤ教「超正統派」1126人に逮捕状…出国も禁止
読売新聞 / 2024年11月20日 16時56分
-
3死者の6割が5歳未満 世界中で感染拡大「エムポックス」 WHOが日本製ワクチンの緊急使用を承認
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月20日 12時7分
-
4タイで“史上最悪の連続殺人犯”に死刑判決 猛毒「シアン化合物」で14人死亡
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月20日 20時39分
-
5訂正-米とのホットライン、現在使用されてないとロシア大統領府
ロイター / 2024年11月20日 15時17分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください