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「後輩を誘い2人だけ残って稽古」はNG? 演劇界「ハラスメント勉強会」が突き付ける根源的な問い

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月5日 16時0分

ハラスメントをなくすことが目的ではない

──そういった問題をほかの舞台関係者たちと勉強していたそうですが、一歩先に進んで、今やっている勉強会を始めようと思ったきっかけは?

「ハラスメントについて学ぶうちにすぐ、通常の研修内容では現状に対応できないと感じました。舞台関係者にマッチングしにくい部分があったり、『芝居をつくるときにハラスメントが起きちゃうのはしょうがないよね』みたいな見方が根強くあった。そこで舞台芸術界に特化したハラスメント講習はないだろうかって思い始めて、当時は知らずにいたので、じゃあ自分で考えてみようと。

ベーシックな部分については一般的な資料を基にしていて、社会のルールとして明示しています。次に、その内容が自分たちの活動にどう繋がっているか、ハラスメントが演劇界で起きやすいとされる背景を解説しています。ただ、「講習」というと一時的に教える、教わるだけで終わってしまうように感じたので、私たち自身の問題として一緒に取り組んでいきませんかという思いから「勉強会」と呼ぶようにしました。この業界ならではの事情を皆で認識して、構造的な問題を共有していくことにも重きを置いています。

ハラスメントという言葉に注意が行きがちですが、ハラスメントだけをどうこうしようとしても根本的に解決しないし、それをなくすことが目的ではありません。創作環境を向上させるための手段、1つの出発点であって、そもそも高い芸術性をもった納得のいく作品を生み出すことが目的のはずです。勉強会の最初の頃はハラスメントに関する内容がやや多かったのですが、今ではリスペクトについて考える部分を増やしています」

──リスペクトについて考えるということの具体的な内容は?

例えば、先輩俳優に誘われて2人きりで居残り稽古をするケースはハラスメントだと思いますか? どんな印象をもちますか? というように、いくつかの現実的な場面について参加者に考えてもらいます。このケースでは、演出家に許可を得なくていいのかとか、労働時間の問題があったりする。予定以上の稽古が契約やギャラに関係すると考えれば、プロデューサーや制作の判断が必要かもしれない。

これは、芝居づくりに携わる人それぞれの「立場と役割」に対するリスペクトのお話なんです。もちろん俳優もその一人で、意欲や向上心は十分尊重されるべきですが、まず演出家、プロデューサーに相談しませんか? と。その人がえらいからとか権力があるからではなく、このような場合に相談を受ける職務についているからです。

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