プラごみの海に沈む地球を救う方法...「たった4つの政策」で廃棄は90%減できる
ニューズウィーク日本版 / 2024年12月18日 15時26分
「食物連鎖の土台部分が失われたらどうなるか見当もつかない。そうした生き物がマイクロプラスチックやナノプラスチックの影響を受けているのはほぼ間違いない」と彼は言う。「海の未来は危機に瀕していると言っても過言ではないと思う」
横浜の店舗のドリンクコーナーには大量のペットボトル飲料が並ぶ AP/AFLO
危機に瀕しているのは海だけではない。プラスチックの製造は気候にも大きな影響を及ぼしている。
プラスチックの多くは石油化学製品から作られ、その過程で大気中に温室効果ガスが排出される。米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究によれば、主要な種類のプラスチックポリマーの製造により排出される温室効果ガスは、世界の総排出量の5%を占め、航空業界の排出量を上回る。
さらに、人体への影響を指摘する研究も増え続けている。
「海洋プラスチックを目にしても、人間の健康への影響はないと人々は考えている」。そう本誌に語るのは、ニューヨーク大学医学大学院小児科教授で、同大学ランゴン医療センター環境有害物質研究所長のレオナルド・トラサンデだ。
トラサンデら専門家の多くの研究によれば、一部のプラスチックに使用されている化学物質のフタル酸塩やビスフェノールは、幅広い健康問題と関連している。例えば、児童の発達障害、肥満や糖尿病だ。
「これらの化学物質はごく限られた種類を見ても、人間の健康に悪影響を与えることを示す有力な証拠がある。つまり、いま分かっているよりも重大な問題が存在するのかもしれない」と、トラサンデは話す。
一方で「大きな変化」も起きているという。きっかけは、22年に国連環境総会が国際プラスチック条約に向けた政府間交渉委員会の設置を採択して以来、議論の範囲が単なる廃棄物削減から人間の健康リスクなどへと拡大していることだ。
ビニール袋が絡み付いたカメ JAG_CZ/ISTOCK
UCSBのマッコーリーも同様の見方をしている。政府間交渉が継続するなか、いくつかの国やアメリカの州・都市レベルでの成功例を、プラごみ危機の深刻さと釣り合う国際規模の取り組みに押し上げる可能性について「慎重ながらも楽観的」だと言う。「世界的な問題なのだから、世界的な解決策が必要だ」
マッコーリーと同僚らは、国際プラスチック条約をめぐる交渉で検討中の対策をさまざまに組み合わせて、削減可能な廃棄量を予測する機械学習モデルを開発している。
「これまでに判明したのは、特効薬はないということだ」と、UCSBベニオフ海洋科学研究所で海洋生態系保護活動を担当するニール・ネイサンは言う。「一貫性のある政策セットが求められている」
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