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働き手「1100万人不足」の衝撃...社会にもたらされる影響と、「危機を希望に変える」企業の役割とは?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月7日 21時0分

また、社会課題の観点でいうと、通勤時間削減は社会的価値が実に大きいわけです。リモートワーク環境やオンラインでのマネジメントスタイル確立に投資をする企業と、そうではなく社員に出社を求める企業。政府が応援すべき企業は当然、前者です。構造的な働き手不足の日本では、サステナブルな企業を応援する機運は高まっていくでしょう。

──個人は「危機」を「機会」に変えるために、どんなアクションをとるとよいでしょうか。

大事なのは「話をすること」です。オペレーションで無駄や無理があれば、経営者や同僚に積極的に相談や改善の提案をしていくのです。「余計なことをいうと立場が悪くなるのでは」と遠慮していた方もいるかもしれません。しかし、今後は働き手が希少になり、経営者もその声を聞くことが重要になっていく。

労働供給制約を見越した打ち手を模索する先進的な経営者は、現場の声からチャンスの芽を見つけ、それを成長に結びつけています。改善点について声を上げることが、働きやすく生産性の高い職場をつくり、みんなでハッピーになる近道になると考えています。

「普通に頑張ればハッピーに活躍できる」組織や社会づくりに寄与したい

──古屋さんがリクルートワークス研究所で若手のキャリア形成・若手育成・労働市場などの研究を続ける原動力は何でしょうか。

2つあって、1つは人間の変化可能性への探究心です。人は置かれている環境によって力の発揮度が変わる。日常的に当たり前にできることの水準が高いという状況は、「高度の平凡性」と呼ばれます。この高度の平凡性が発揮しやすいよう、普通に頑張っていれば幸せに活躍できる組織や社会をつくりたいなと思っています。

2つめは、「人生100年時代」で寿命が延びることを社会全体でハッピーな状況と受けとめられるようにしたいという願いです。特に若い人と話をすると、寿命が伸びていくことを「仕事をたくさんしなければいけなくなる」とか「高齢化が進む」とネガティブに捉えている声が多い。働き手不足のような危機をむしろ契機にして、誰もがロングライフを楽しめる21世紀にできないか。そんな思いで研究に向かっています。

『銃・病原菌・鉄』の発想が研究のモチベーションに

──最後に、古屋さんの人生観や発想に影響を与えた本についてお聞かせください。

好きなのは進化生物学者ジャレド・ダイアモンドの著作です。中でも10年ほど前に読んだ『銃・病原菌・鉄』には大きな影響を受けているかもしれません。15~16世紀にヨーロッパ人がアステカ帝国やインカ帝国のネイティブアメリカンに圧勝したのは、ヨーロッパ人が優れていたからではない。こうした違いを生んだのは「土地」だと著者はいいます。病原菌に関していうと、人口密度が高くなりやすいヨーロッパの土地が病原菌の遺伝子変異の回数を増やして強い病原菌をつくり、それが持ち込まれたインカ帝国などでは、その免疫のなかった人々を死に追いやった。つまり、人は生まれもった能力の差ではなく環境に左右される。この発想が私の研究の土台にあるかもしれません。

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