中国経済の失速・デフレ化が世界金融市場の「無視できないリスク」になる
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月8日 15時4分
これまでは習近平指導部への権力集中が図られる中で地方政府に対するカネの締め付けが続き、財政政策が緊縮的に作用し続けてきたとみられる。これが変わらなければ、経済成長を高める財政政策は発動されないだろう。
もちろん、インフレ率は独立した金融政策の責任で制御するのが、標準的な経済理論の教えである。ただ、中国人民銀行の独立性はかなり限定的で、共産党指導部の政治的な意向が強く影響するとされている。
世界経済の安定成長が崩れるシナリオも
12月25日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版は、「中国が経済成長再活性化のための諸策を緊急に実施しなければ、米国の大恐慌時に起きたような壊滅的なデフレスパイラルに陥る恐れがある」とする報告書が作成された、「習氏はアドバイザーらに『デフレの何がそんなに悪いのか』『「物価が下がれば人々は喜ぶのではないのか』と尋ねた」と報じている。
この報道の信ぴょう性を判断する知見は筆者にはないが、習近平指導部の経済認識がこの通りなら、同国でデフレ克服につながる政策転換は実現しないだろう。
2000年代の日本でも、「良いデフレ」などと言う論者がメディアで散見される中で、保守的な日銀官僚によるデフレを放置する金融政策が続いた。2013年のアベノミクス発動でようやく変わったのが日本の教訓だが、習近平体制が続く限り中国ではデフレと低成長が続きそうだ。
こうした経済状況のもと米国との関税引き上げ合戦を余儀なくされるので、輸出、生産活動にブレーキがかかる。このため、2025年の中国経済の下振れリスクは大きい。
2025年の株式などリスク資産への投資のリスクは、マクロ安定化政策が機能しない中国経済の失速をきっかけに、同国の政治情勢が不安定になる点ではないか。
また、中国との経済関係が深い新興国の成長減速が広がり、世界経済の安定成長が崩れるシナリオも想定される。これらが、2025年のリスク資産への投資の無視できないリスクとなるだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
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