新たな分断に直面する韓国 戒厳令から1カ月、大統領官邸前で対峙する二つの民意
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月10日 19時20分
8年前のろうそく集会は光化門広場、親朴派集会は光化門広場から500メール離れたソウル市庁前広場で行われた。そのときも警察は対立する2つの集会場の間に機動隊を配備した。会場は緊迫した雰囲気で取材カメラを向けた際、怒号を浴びせられるなど恐怖を感じるほどだった。
一方、今回は落ち着いており、恐怖を感じる場面はない。8年前の反朴集会会場と親朴集会会場は、最寄り駅はもとより地下鉄路線も異なっていたが、今回は官邸前での集会とあっていずれも地下鉄6号線漢江鎮駅が最寄りで両派が接触するが、大きな衝突等は起きていない。退陣要求集会参加者から会場を尋ねられた大統領派集会参加者が、懇切丁寧に教える場面もあったほどだ。
着座用発泡スチロールやマットを持参する集会参加者たち(筆者撮影)
8年前との違いはほかにもある。8年前はろうそくの在庫が不足して、増産や追加輸入する事態に陥った。今回はろうそくに代わってペンライトが使われることが多く、なかには交通誘導灯やK-POPアイドルのペンライトを持ち込む人たちもいる。
また8年前は会場で着座用マットなどを販売する光景が見られたが、今回は多くの参加者が発泡スチロールやキャンプ用シートなど持参している。またスペースの関係からか屋台は8年前の3分の1ほどで、温かい飲み物や菓子などをデリバリーで注文する集会参加者もいるという。
地方からの参加者は大きく異なる。8年前は大型バスを手配して早朝に各地を出発、午前中に景福宮などソウルの名所を観光してから集会に参加するツアーで交通渋滞が起きるほどだった。今回も農業用トラクターでソウルに向かった農家と警察が対峙する場面が見られたが、全国各地で集会が行われているからか集会参加ツアーは見られない。
尹錫悦は支持できないが、李在明は嫌い!
世論調査会社韓国ギャラップによる12月末時点の尹大統領の支持率は13パーセントで不支持率は80パーセント、与党・国民の力の支持率25パーセントで、最大野党・共に民主党の支持率は42%だった。だが、韓国人の33パーセントが尹大統領の続投を求めているという調査もある。
尹大統領を支持しないながらも続投を求める理由は次期大統領候補にあるとみられる。尹大統領が辞任した場合、次期大統領は最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が最有力だ。李代表は12月31日、2日前に航空機事故が起きた務安空港を訪れたが、ある遺族から「宣伝のために来たのか」と糾弾されるひと幕があった。共に民主党の支援を大統領選を踏まえた偽善行為と見做したのだ。
実際、筆者が知る韓国人は、「尹錫悦は支持できないが、それ以上に李在明(の大統領就任)は嫌だ」と話す。尹大統領派集会には反李在明派が相当数加わっているようだ。
【動画】大統領官邸周辺での反尹派と親尹派が対峙
1月4日、大統領官邸周辺では反尹派と親尹派がそれぞれ集会を開き気勢を上げた。 YTN / YouTube
【動画】厳寒の雪の中、座り込みを続ける反尹派
1月5日、雪の降る中、座り込みを続ける尹大統領の弾劾を求める集会参加者たち MBCNEWS / YouTube
【動画】カトリックの修道院が手を差し伸べる
集会参加者たちのため、漢南洞のカトリックの修道院はトイレと本堂を開放した。 JTBC News / YouTube
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