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「僕はホームレス」その長い髪とひげには「理由」と「秘密」がある...

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月31日 14時40分

そして何も問題はなく、病院に入りスムーズに桂さんへのお見舞いをやり遂げたのだった。

征一郎さんの長い髪と長いひげのイメージのせいで、ある時は奇妙な様子にもなった。

彼がアルミ缶を売りに行く廃品買取所は足立区の北千住にあり、大量のアルミ缶を積んだ自転車だと、北区の赤羽からは往復4時間かかるという。もしも自転車が故障したら、アルミ缶を担いで片道10キロ以上の道のりを歩く必要がある。

実際に自転車が壊れたことがあり、その時は代わりに、拾ったベビーカーを押して行った。

髪がぼさぼさで身なりが乱れ、大きなマスクをした50代の男が、重さ30キロほどのアルミ缶が入ったベビーカーを押して道路を歩いている風景はとても奇妙だ。行きは通行人や警察からの疑いを招くほどではないが、帰り道では何も入っていないベビーカーを押して歩くことになり、恐怖と不安が重なったという。

征一郎さんのこの様子が街の人たちの注目と疑いの目を集めた

ベビーカーを押し、危うく警察に捕まるところだった

特に足立区にいる人は、彼がホームレスであることを知らない。

その格好からして、赤ちゃんのいるお父さんには見えない。子供を誘拐した容疑者としてすぐに警察に通報すべきかどうか迷ってしまうかもしれない。

ベビーカーの前まで追いかけて、見に来た勇気のあるおばさんもいた。

実は征一郎さんは、遠くから自分をじっと見つめているおじいさん、おばあさんが何人かいることに気づいていた。いたずらの癖が出て、歩きながらわざと頭を伸ばしてベビーカーの中を覗いた。

この動作は、見物人たちをますます慌てさせたのだろう。警察が通報を受けたのか、数分後、征一郎さんの後ろにサイレンを鳴らすパトカーが現れた。

それに気づくと、わざとベビーカーを押して小走りになった。すると緊張感が走って警察官は急ブレーキをかけ、パトカーを降り、早足で追いついてきたという。

警察官はベビーカーの中に何も入っていないのを見て、誤解だと気づいた。

おそらく、警察がまたこのような通報を受けたときには、まずその「容疑者」が長髪のホームレスかどうかを事前に確認するだろう。

長い髪とひげがホームレスの生活を守ってくれる

ここまで読んだ皆さんは、長い髪とひげが余計な誤解を招く以上、短くすればいいじゃないかと思うかもしれない。

しかし、征一郎さんが言った3つの理由を聞くと、長い髪とひげを残しておくことが彼にとっていかに重要であるかが分かる。

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