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「僕はホームレス」その長い髪とひげには「理由」と「秘密」がある...

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月31日 14時40分

理由の1つは、自分が「あの長髪のホームレス」だと周囲に知らしめることだ。

征一郎さんは荒川河川敷に何年も住んでいる。

赤羽と志茂にあるいくつかのゴミ収集場所に、以前よく通っていた。

おじいさんやおばさん、ビルの管理人は、長髪のホームレスの彼を知っており、彼が毎日そこにたくさん置いてあるアルミ缶を取りに来ることを黙認していた。突然長髪が短髪になり、彼らに認知されなければ、困ることになる。

理由の2つ目は、冬になると髪やひげが寒さを防ぎ、保温する役割を果たすことだ。

征一郎さんの話は、少しこじつけのように感じるかもしれないが、実は科学的根拠がある。髪とひげは皮膚を保護する天然のバリアだ。放熱量を減らし、寒さを防ぎ、日焼けを避け、転んだときの衝撃を減らす効果もある。

そのため、長い間野外で生活しているホームレスにとっては、長髪やひげを伸ばすことは邪魔ではなく、むしろ必ず必要なことであることが分かる。

理由の3つ目は、恥を隠すこと。

征一郎さんは虫歯ができても歯医者に診てもらわないため、口の中の歯はほとんど落ちてしまい、小さな歯が4本残っているだけだ。口を開けて話をしたり、食事をしたりすると、口の中の「ブラックホール」が現れる。

ひげの覆いがあれば、この「ブラックホール」は美しい「水簾洞」(入り口が滝に隠された洞穴)になる。

ははは、これは筆者が考え出した比喩で、少し誇張しているかもしれない。

桂さん(左)と征一郎さんは荒川のほとりで香ばしく焼いた羊の串焼きを食べている

4本の歯で焼いた肉を食べられた、25本も

征一郎さんは私にこう言った。

長年、カップラーメンを1日1パックしか食べていない。それが、お金を節約するだけでなく、歯がないことにも関係があるのかもしれない、と。

以前、桂さんと征一郎さんの2人に羊肉の串焼きをごちそうしたことがある。

征一郎さんには歯がないので、焼肉のようなものが食べられるかどうか少し心配していたが、その心配は取り越し苦労だった。

桂さんの七輪を使って、40本以上の羊肉の串焼きを焼いたのだが、征一郎さんは意外にも食べるのが早かった。桂さんがまだ1本も食べ終わらないうちに、征一郎さんはもう3本も食べていた。

結果的に征一郎さんは25本を食べた。私と桂さんを合わせても彼ほど多くはなかった。

私は好奇心から、征一郎さんに聞いた。

「あなたは歯がないのに、どうしてこんなに上手に食べることができたんですか」

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