AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる......ピークアウトする中国経済の真実
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月4日 15時45分
高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)
<「バブル崩壊」の一方で「EVとAIが躍進」する中国。矛盾する14億人経済の謎を、話題の新刊『ピークアウトする中国』を著者自らが解説>
中国経済は今、どんな状況にあるのか?
シンプルな問いだが、答えるのは案外難しい。AI(人工知能)やEV(電気自動車)など、輝かしい成果を出している産業や企業が多い一方で、不動産価格の下落は止まらず消費不況の色も強まっている。光と影、いったいどちらの中国が真の姿なのか?
最新AIディープシークの衝撃
まずは光の側面を見ていこう。
中国発の最新AIディープシークが世界に衝撃を与えた。性能の高さもさることながら、開発にかかるコストが従来の10分の1、運用コストは数十分の1という劇的なコストダウンが世界に衝撃を与えた。これまでAI開発はパラメータ数(変数の数)、データ量、計算量を肥大化させれば性能が上がるという法則に準じて開発を進めてきた。どれだけ資金を投入できるか、米エヌビディア社の最先端GPU(画像処理半導体)をどれだけ確保できるかという体力勝負だったが、ディープシークは創意と工夫で別の道を見いだした。
本当はもっとコストがかかっているのではないか、不正な手段で入手したGPUやデータを使っているのではないかと疑う声も上がっている。おそらく疑惑の一部は事実だろう。ただ、それでディープシークが全くのまがいものとは言えない。彼らはオープンソースでAIを公開し、開発手法についても詳細を発表しており、世界中の検証にさらされているからだ。
そもそも中国人のAI開発能力は本物だ。米ポールソン研究所傘下のシンクタンク「マクロポロ」のグローバルAIタレントトラッカーによると、世界的AI研究者の47%が中国人。オープンAIなど米AI企業もディープシークなどの中国企業も、中国人によって支えられている。
自動車メーカーのBYDが韓国で開いたEVの新車発表会(1月) SEONG JOON CHOーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
EVでも中国は世界のリーダー
EVでも中国は世界のリーダーだ。昨年の販売台数は1287万台、世界市場の4分の3は中国市場が占めている(プラグインハイブリッド含む)。単に台数が多いだけではない。高い処理性能を持つ車載コンピューターと大型ディスプレイによって、動画視聴やゲームなどの車内エンターテインメント性能、アップデートによる機能追加も高く評価されている。また、ハイエンドのADAS(先進運転支援システム)を搭載する車が多い。今年発売されるEVの2割以上はレベル2+(プラス)自動運転に対応するとみられている。メーカーは事故の責任を負えないため、運転の主体は人間とするレベル2だと定義しているが、人間が介入せずに運転できる比率が高まっている。昨年には運転者のいないロボタクシー「アポロ・ゴー」の商用運行が始まった。
この記事に関連するニュース
-
トランプ関税発動で今週は乱高下も!?「DeepSeekショック」は意外と根深い!?
トウシル / 2025年2月3日 13時50分
-
相場展望1月30日号 米国株: 中国DeepSeekショック、FRBは金利を据え置き 日本株: 日経平均の先行きも安心してはおれない
財経新聞 / 2025年1月30日 14時13分
-
5%成長は本当?中国経済「失速」の知られざる実態 貿易黒字は過去最大でも「産業空洞化」の懸念
東洋経済オンライン / 2025年1月30日 7時50分
-
ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「一帯一路」の真実
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月29日 19時45分
-
AI革命は、アメリカではなく中国から低料金でやってきた!?【トランプ2.0】
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月28日 18時20分
ランキング
-
1ホンダ・日産の株価急上昇、需給巡る思惑先行 破談報道でも
ロイター / 2025年2月5日 10時39分
-
2やりすぎやん、スシロー! 鶴瓶のCM“抹消”は危機管理的にアリかナシか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月5日 6時10分
-
3「横浜駅に頼らない路線」神奈川県ご当地鉄道事情 代表格は「ロマンスカー」でおなじみの大手私鉄
東洋経済オンライン / 2025年2月5日 6時30分
-
4トランプ政権始動、円相場の行方は関税次第に…マーケット・カルテ2月号
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月5日 7時0分
-
5西友の売却に見る「総合スーパー」の終焉 かつてダイエーと争った“王者”の行方は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月4日 8時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください