不動産王トランプの新たな妄想「ガザのリゾート化」は実現可能か? 和平への唯一の道は「これだ」
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月12日 15時46分
10人ほどの専門家が共同執筆した報告書は、一方で楽観的な論調も示している。
数十年に及んだ北アイルランド紛争や旧ユーゴスラビアの解体に至ったユーゴ紛争など7つの事例を挙げて、今は「和解不能」に見えるイスラエルとパレスチナの紛争にも和平合意は可能だとみる。
その上で、「イスラエルは望まぬ交渉相手である武装組織も含め、全関係者と交渉する必要がある」としている。
さらに、双方が永続的な平和を築くにはパレスチナ国家樹立への確実な道筋と、イスラエル国民とパレスチナ人からの幅広い支持、パレスチナの経済的自立を可能とする地理的な計画策定、具体的にはヨルダン川西岸とガザを結ぶ安全なルートの確保が必要だと述べている。
「自治政府の改革が無理なら別の組織が主導する形になってもいい」。ランド研究所の非常勤上級研究員で報告書の筆頭執筆者であるチャールズ・リースは本誌にそう述べた。
「大事なのはそうした組織が正統性を有し、パレスチナ人に明るい未来を約束でき、国際社会の後押しを得て、イスラエルと交渉できることだ。だが残念ながら、今はまだその段階まで来ていない」
交渉の障害には、ヨルダン川西岸でのイスラエル入植地の拡大やエルサレムの地位をめぐる問題も挙げられている。
エルサレムについては、イスラエルとパレスチナの双方が自国の首都だと主張してきた。
イスラエルは67年の第3次中東戦争で東エルサレムを占領し、80年に正式併合を宣言したが、これは国際社会で強く非難された。国連は今もエルサレムは東西に分割されているとの立場だ。
いずれ自治政府が本格的なパレスチナ国家に改組されれば、かなりの警察力は必要になるが、ランド研究所の見立てでは、戦車や大砲を備える規模の軍事力保有は禁じられる。
代わりに、まずは中東や西側の諸国で構成する「特別多国籍連合機関」が現地に展開し、その後に平和憲法が施行され、パレスチナの人々には自分たちの指導者を選挙で選ぶ機会が与えられる。そんな筋書きだ。
今のガザはイスラエル軍による激しい爆撃と地上作戦でほぼ壊滅状態にあるが、ランド研究所は金融や医療、教育や司法のシステムも新たにつくり直す必要があると指摘し、「物理的・社会的なインフラが荒廃したまま、希望が生まれにくい状況では、平和に向かって決然と舵を切ることはできない」としている。
いずれにせよ、ガザの再建案は中東諸国だけでなく国際社会にも支持される必要がある。サウジアラビアやエジプト、ヨルダンやUAEなどが仲介の労を取ってイスラエルとの貿易協定を締結する必要もある。
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