福島に届かぬ"原発反対"の声 社会学者・開沼博さん<「どうする?原発」インタビュー第5回>

ニコニコニュース / 2012年8月21日 14時45分

社会学者・開沼博さん

 毎週金曜日、首相官邸前で行われる脱原発デモは、首都の日常風景になりつつある。しかし、気鋭の社会学者、開沼博さんは冷静な視座でそれを見つめる。現在の脱原発デモが実際に社会を変えていく可能性はあるかと問われると、断言した。「少なくとも現在までは、まったくないですね。全国の原発立地地域にも、まったく、何も届いていない」

 この強い否定には理由がある。2006年から「福島原発」の研究に着手し、現在は、在籍する東京大学とフィールドワークを行う福島大学とを往復する生活を続けている。開沼さんは、福島県いわき市の生まれ。「フクシマ」は故郷でもある。

 「私は、都会で行われる脱原発を唱える社会運動について『それ、福島に届いているとでも思っているんですか?』と常に問い続けてきました。今の都会で脱原発を唱える社会運動は3.11をきっかけにはじまり、『Save Fukushima!』とか『フクシマは怒っている』とか叫んでいます。 でも、それは本当に福島のため、あるいは東日本大震災で被災した方のためになるのか。『あそこにはもう住めない』とか『福島県産品は危ない』とか『がれきなんか受け入れられない』とか、いりません。
 そこには震災後も変わらぬ暮らし続けている人がいるし、かつての居住地を離れてもいつか戻りたいと思っている人がいる。また、移住しても、新しい生活をはじめるための手段を欲している人もいます。いつまでも『こんな悲劇がある』『こんな悪いやつがいる』とか言ってても、何も進みません」

そして、開沼さんは、現在の運動が原発立地地域の当事者を置き去りにしていることを指摘する。

「こういうことを言うと、社会運動クラスタ(集団)には『福島のことを考えている人もいますよ』とか『いま頑張っている最中なのに水を差すな』とか怒る人がいますが、そういう言い訳はいらないんです。そんな、『実績は出てませんが、頑張っている私のこと認めてください』みたいなの、こっちに向けられても何も解決しない。あなたは、震災後の日本社会をよくしたいのではなく、自分(たち)が認められたい・承認得たいがためにやっているんですか、と聞き返しちゃいますよ。
 もちろん、子どものことを心配して参加する熱心な親御さんや、真剣にエネルギー政策や日本の政治をどうにかしたいと考えてそこに加わる方も多数いらっしゃってそれはすばらしいことです。でもそうではない人もいて、冷静に謙虚に、事実として、本来変えるべきこと、救うべき人を置き去りにしていることに向き合おうとしない人間がいる。
 その落ち度を指摘されたら反発するのではなく、『確かにそういう部分があったな、どうしよう、何か他にできることはないのか』と自分自身に問いを向けなければなりません」

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