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同接18万を記録した伝説のリングフィットRTA走者がRTA卒業を発表。RTAのために栄養学を学んだ文武両道マッチョが次に挑戦すること

ニコニコニュース / 2023年2月6日 12時0分

 ゲームの最速クリアを目指すRTA(リアルタイムアタック)のイベント「RTA in Japan Summer 2021」にて、同時接続者数18万人を達成し、Twitterトレンド1位にも名乗りを上げた伝説のリングフィットRTA”を覚えているだろうか。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「リングフィットアドベンチャー – RTA in Japan Summer 2021」より)

 何をしているのかはよくわからないが、マッチョな男が一生懸命動いてゲームをしている姿。まるで『SASUKE』の古舘伊知郎アナウンサーのようなパワーワードに溢れる田口尚平アナウンサーの解説。なぜか差し込まれるボディビル大会のような筋肉応援掛け声

 多くの人に多大なインパクトを与えたRTAで一躍時の人となったのが、RTA走者・えぬわたさんだ。

リングフィット RTA えぬわた

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 えぬわたさんは、リングフィットRTA世界記録7冠を誇る、まさにリングフィットRTA界における最強ランナー。

 ジム通いで鍛え上げられた肉体は言わずもがな、リングフィットRTAのために栄養学を学びパーソナルトレーナーの資格も取得するなど、文武両道マッチョな彼に一切の死角はない。

 そんなえぬわたさんが、2023年2月5日の配信をもって、リングフィットRTAから卒業することが自身のTwitterにて明かされた。

 「RTA in Japan」でひと際注目を集め、その影響かインフルエンサーとしての活動も増え、一見すると順風満帆のように見えたえぬわたさん。

 「なぜRTAから離れることを決心したのか?」「今後はどのような活動をしていくか」など、今回の卒業についてお話を聞くべく、ニコニコニュースオリジナル編集部はえぬわたさんにアプローチ。ラストランに向けて調整中の忙しい時期にも関わらず、承諾をいただけた。

 取材の中では、えぬわたさんの『リングフィットアドベンチャー』への愛が爆発。ゲームやRTAとしてのおもしろさはもちろん、身体を鍛える面での魅力についても熱く語っていただいたのだが……その見事なまでに鍛えられた肉体で言われると説得力しかなかった。

リングフィット RTA えぬわた

 また、今後の活動においても「ジム通いの再開」や「フルマラソンで4時間切りに挑戦したい」など、ゲームのRTA走者(配信者)とは一線を画す展望もえぬわたさんらしさに溢れていた。

 信じられないほどの時間と労力をゲームに注ぎ込む、やりこみゲーマーの頭の中に迫るシリーズ「やりこみゲーマー列伝」。今回はリングフィットRTAに人生を捧げた男・えぬわたさんにお話をうかがった。

【やりこみゲーマー列伝】

取材・文/河村六四
編集/竹中プレジデント

肉体面の衰えやケガのリスクを考えて1年前から卒業を考えていた

──えぬわたさんといえば「RTA in Japan Summer 2021」での『リングフィットアドベンチャー』のRTA(リングフィットRTA)で大きな話題を集めました。この度、えぬわたさんの代名詞とも言えるリングフィットRTAから卒業されるということで、その理由をうかがえればと思っています。

えぬわた:
 リングフィットRTAから離れようと決めた理由で大きいのは年齢ですね。2月7日で30歳を迎えるのですが、そこを節目にしようと1年前くらいから考えていました。

 もちろん、30歳になった瞬間いきなり体力が衰えるわけではないです。ただ、RTAの記録をそこそこ満足に詰められた段階で、自分の年齢も節目を迎えたということで、よきタイミングかな、と。

──『リングフィットアドベンチャー』は肉体を使うゲームなので、やはり年齢の影響が大きいのでしょうか?

えぬわた:
 リングフィットRTAにもいろいろなカテゴリがあるんですけど、14時間近くかかる「any%」、20時間以上かかる「100%」など、長時間のカテゴリには限界を感じています。

 タイム短縮に重要な「空気砲」【※】の最高速度は落ちてないんですけど、やっぱり疲れやすくなったかな、と。あと疲労の回復も遅くなりました筋肉量も減っています

※リングコンを押し込む操作で発動する。経験値を稼ぐため、手持ち無沙汰の道中はひたすら空気砲を撃ち続けることになる。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part2」より)

──鍛え上げられた肉体をされているので意外です。

えぬわた:
 あと、卒業の理由としてもうひとつ大きいのが、RTA中にケガしちゃうのが怖いというのもあります

 心肺関連やアキレス腱など、長時間にわたって激しい運動を続けるのは、誰がどう考えても身体への負担が大きいので。今は大丈夫ですが、そのいつかが来てからでは遅いので、早めに身を引くべきだなと。

──ゲームのRTAなのにケガのリスクというのもリングフィットRTAならではですね。

えぬわた:
 ただ、短時間のカテゴリでしたらまだまだ挑戦できるので、2月5日の時点で記録を詰めきれてなかったりやり残しがあったりとか、あとはその記録が抜かれたりイベントに出たりとかってなった場合には挑戦する可能性はあります。

 それにRTAからは離れても『リングフィットアドベンチャー』の通常プレイは続けたいと思っています。 RTAを抜きにしても大好きなゲームなので!

──まるでスポーツ選手が引退する際の理由のような……。それほど肉体面が大事なRTAなんですね。普段から身体のコンディションを調整しないといけないのもあるでしょうし。

えぬわた:
 大事ですね。たとえば「any%」のカテゴリだと、朝9時に始めたとしても終わるのが夜中0時なんです。

 朝9時にRTAを始めるためには、準備のためには3時間前の6時ぐらいには起きないといけないので、大体1週間前から生活リズムを整えていくのが大事なんです。なので、普段からお酒も飲まなくなりましたし、RTAを走る日が迫ると食事にも気をつけます

──気をつけるというと?

えぬわた:
 とくに前日はカロリーを多めにしています。パスタをはじめとした炭水化物の摂取量を増やして身体にエネルギーをためておく、みたいな感じです。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part1」より)

──やはり過酷……。リングフィットRTAに挑戦し続けることは難しいんでしょうね。

えぬわた:
 難しいです。今お話した体力面もそうですが、精神的にも疲弊するっていうのが大きいと思います。

──精神的な疲弊とはいったい?

えぬわた:
 前提として、リングフィットRTAのタイムは現在ある程度突き詰められていて、更新するためのハードルも私が参戦したころよりも高くなっています。

 空気砲にしても、昔は平均800回で十分だったんですが、今は平均890回くらい必要になっていたり。記録更新を目指そうとすると求められるレベルというのは上がっています。

 2022年の5月くらいに「筋肉グリッチ」【※】というテクニックが見つかって、各カテゴリで動きがあったんですが、それ以降は一旦落ち着いている状況なのもあって、走っても記録更新に繋がりにくいんです。

※空中でリングコンを下に強く連打し続けることでより長距離ジャンプ移動できる技。筋肉が必要。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part12」より)

──記録がもう突き詰められている、と。

えぬわた:
 もちろん、もしかしたら記録更新できるかも、みたいな楽しみもあるんですけど。時にもよりますが、昔に比べると記録更新に燃える気持ちは薄れている感じはします

 昔は、「ここを組み替えれば改善できるな」とか「こうすればもっと早くなるな」みたいなところがバンバン見つかっていたんです。なので、次の挑戦ではタイムを縮められる手応えがあった。

 今はチャートもかなり詰まっていて、「1回でもミスしたら記録更新はない」みたいなプレッシャーのもとで挑んでいます。そういうのもあって、後ろ向きな気持ちで挑戦することも増えてきたので、それも潮時だと思ったひとつの要因ですね。

「any%」カテゴリにはリングフィットRTAのおもしろさが詰まっている

──2月5日をラストラン配信の日にしたのは何か理由が?

えぬわた:
 2月7日の誕生日を迎える前、20代のうちに走っておきたいなっていうところで、その前の土日である2月5日に走ろうと決めました。

──現在はどのような準備をされているのでしょう。

えぬわた:
 「any%」カテゴリに挑戦する予定なので、チャートを詰められるだけ詰めつつ、本番に向けて毎週土日に「any%」に挑戦して調整していこうと考えています。

 ただ、最近は途中でミスったり、体の調子がちょっとでもよくなかったりして完走できない状況が続いてしまっているので、不安もあります。体調次第でいくらでも記録が変わるようなRTAですので。

 この前の配信でも、空気砲が全然出なくて14時間走るつもりだったのに20分ぐらいでやめちゃう、みたいなこともやらかしまして。

──あら、空気砲が出なかったというのは肉体のコンディション的な理由ですか?

えぬわた:
 はい。肉体的な理由です。ですので、完走できるようにこれまで以上に身体のコンディションをしっかり整えていこうと思っています。

──ラストラン配信で挑戦する「any%」は空気砲の精度も重要になってくるカテゴリです。加えて、約14時間のランと過酷なRTAになりますが、ラストランで「any%」カテゴリを選んだのには何か理由が?

えぬわた:
 「any%」カテゴリが、自分にとっての最初のリングフィットRTAだったので、思い出深いというのがまずあります。

 そして、なにより「any%」カテゴリには、リングフィットRTAのおもしろさが詰まっているからですね。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part9」より)

──リングフィットRTAのおもしろさ、ですか。

えぬわた:
 はい。リングフィットRTAって基本的にはRPGのRTAなんです。ダメージ計算をして、適切な技を選ぶ。ランダム要素に応じて最適な行動を取る。

 こういったことがRPGのRTAの醍醐味なんですけど、リングフィットRTAはそれに加えて、肉体への疲労という要素が加わります。

──判断軸が増えることで、深みが増すわけですね。

えぬわた:
 とくに「any%」カテゴリは、10時間以上運動し続けて疲弊している状態で最適解のために脳みそを働かせなければならない

 筋肉だけではなく、構成能力やアドリブ力も求められるこのカテゴリが、自分の強みを出せる意味でもあっているなと。あらゆる理由からラストランは「any%」がよいだろうと判断しました。

ゲーム・筋肉・精神のすべてが完璧じゃないと記録が出せない

──ラストラン配信で走る「any%」カテゴリ以外も、まだまだ挑戦をされているみたいで。

えぬわた:
 RTAから離れるので、それまでに記録を詰めたいっていうのが今のモチベーションですね。

──ちなみに配信を拝見すると、「Beat World1」カテゴリなどは1日に何度も挑戦されているようですが、肉体的には大丈夫なのでしょうか。

えぬわた:
 私自身、「100%」カテゴリでは20時間以上走り続けることもあるため、10分台で終わるカテゴリを何回か走る分には体力的に問題はないです。

 とは言え、筋肉のパフォーマンスを考えると3回くらいがピークで、4回目以降はパフォーマンスも落ちます。ただ、「何度も挑戦してベストを出す」というのもRTAとしては大事なので、多いと10回くらい挑戦することもありますね。

──10回も……。体力がそこまで持つのが信じられないです。

えぬわた:
 RTA中、ずっと全力で動いているわけではなく、例えば17分のランのなかで本気中の本気を出さないといけないのって3分くらいなんです。

 サッカーで例えるとわかりやすいかもしれません。サッカー選手って、試合の90分間走り続けてますよね。で、その中で全力ダッシュする瞬間が何度もあるみたいな。それと似たような感じかもしれないですね。

──なるほど。疲れてくると、ゲームの操作にも影響しそうですが。

えぬわた:
 ものすごくありますね。とくに「Beat World2」(ワールド2までクリア)までのカテゴリがきついと思ってます。全力でリングコンを押し込んだ後、筋肉が強張っている状態でリングコンをうまく操作するっていうのはミスもおきやすいですし。

 あと、筋肉グリッチという技は筋肉も技術も必要なテクニックなので、疲れている時にこの技をどうくり出すか。当然、元気なときよりも技を出すのが厳しいので、そういうところがおもしろいですよね。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part13」より)
リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part13」より)

──純粋な操作ミスが起きることもあると思うのですが、その時の心境は?

えぬわた:
 RTAってそれとの戦いでもあるんですけど、やっぱり悔しいです。とくに、肉体のコンディションがめちゃくちゃよかった時に、他のしょうもないところでミスした時は本当にもったいないなって思います。

 心技体じゃないですけど、ゲーム・筋肉・精神のすべてが完璧じゃないと記録が出せないところはありますね。そこがまたリングフィットRTAの難しいところかな、と。

──解説動画の中では、「100%」カテゴリの時は10時間を超えたらきつく、20時間を超えたら大丈夫になる、といった話もされていました。

えぬわた:
 10時間を超えたぐらいから気持ちが辛くなるんです。メンタルとの戦いだと思います。

 解説動画の当時は休憩ルールというのがなかったのでかなり特殊なんですけど、28時間不眠不休で挑戦すると本当に心が折れそうになるんですよ。なので、20時間ぐらい経つと、「あ、そろそろ終わりだな」って思えるんです。まだ8時間も残ってるのに、終わりが見えて気持ち的に明るくなるんです。

 肉体的なことを言うと、18時間ぐらいでレベル上げが終了するので、そこでも気が楽になります。それまでは、ずっと全力で空気砲を撃ち続けないといけなかったりするので、そこも楽になるポイントだったりします。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part14後編」より)

──休憩ルールの導入によって、そのあたりもだいぶ緩和されたんでしょうか。

えぬわた:
 もちろんです。6時間やると30分休み、もう6時間やると30分休み。そこからさらに4時間、計16時間やると8時間の休憩が取れるみたいなルールですね。

 ぶっちゃけ30分で体力回復するかっていうと、しないんですよ。ただ、その間にトイレに行ったり、一旦ちょっと息を落ち着かせたり。そういうことができるだけでメンタル的にすっごく楽になるんです。

 今までだったら28時間走らないと休めなかったんですけど、6時間で「あ、もう休憩だ」みたいな。それが毎回あるわけで、個人的には体力回復よりもメンタル回復の方が大きいと思ってますね。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part14後編」より)

──ちなみに、リングフィットRTAに運の要素はどのくらいタイムに影響を及ぼすのでしょうか。

えぬわた:
 そこそこありますけど、ほかのRPGのRTAよりは少ないと思ってます。敵とのエンカウントはすべて固定ですし、敵の行動もかなり固定されています。

 一番運が絡むのは素材のドロップですね。ブドウやイチゴなどの素材を集めてスムージー(攻撃力を上げたりするようなバフアイテム)にして、戦闘中に使って攻略していくんですが、けっこう偏ることもあります。イチゴが足りず、イチゴスムージーが作れなくなって詰む、みたいな運要素はありますね。

──ゲーム・筋肉・精神に加えて運も必要なんですね。

えぬわた:
 はい。もちろん、不測の事態にどこでリカバリーするのか、というのもけっこう計算しています。何度も挑戦して、運が悪かった場合のリカバリー方法も身につけないといけないので、そこは経験値がものを言うところですね。


『リングフィットアドベンチャー』はガチで使えるトレーニングゲーム

──「冒険しながら、フィットネス」を謳う『リングフィットアドベンチャー』ですが、実際に身体を鍛えられるものなのでしょうか?

えぬわた:
 選ぶ運動によりけりだと思います。リングコンを潰す系の動作はしっかり筋力増量にもなりますし、走るほうをメインにしたら有酸素運動になるので減量に繋がります。

──ちゃんと鍛えられるんですね。

えぬわた:
 すでにジムで鍛えているような人が『リングフィットアドベンチャー』だけで筋肉モリモリになるか、っていうとならないです。ウエイトトレーニングのほうが効果はあります。

 ただ、私自身、走るほうメインでメニューを組んで減量し、フィジークで入賞した経験もあるので、ガチで使えるトレーニングゲームだと思っています

──では、『リングフィットアドベンチャー』のコンセプトである、運動不足解消には間違いなく有用なんですね。

えぬわた:
 はい、まさにそうです。これで筋肉痛になる人とかめちゃくちゃたくさんいるので、本当にいい運動になるゲームですよ。

 あわせて大事なのは食事ですね。食べる量を増やして『リングフィットアドベンチャー』をすれば、それがちゃんと筋肉に変わります。逆に食べる量を減らせば体重も減っていくみたいなところで、付き合いかた次第です。

──運動系ゲームはいろいろありますが、『リングフィットアドベンチャー』ならではの特徴というのはなにかあるんでしょうか?

えぬわた:
 私自身、すべての運動系ゲームを知っているわけではないのですが、普通の運動系ゲームは、あくまで運動+ミニゲームみたいな感じなんですよ。運動に遊び要素が加わっている。

 でも『リングフィットアドベンチャー』は逆で、おもしろいゲームがベースにあってゲームの操作方法が運動、みたいな感じなんですね。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part8」より)
リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part8」より)

──なるほど。

えぬわた:
 『リングフィットアドベンチャー』ってRPGなので、技を選ぶときに相手の弱点とか相手の残り体力とか、そのスキルに対するコストとかを考えて技を選んでいくんです。さらに、その判断軸に自分の体力も加わるっていうのがめちゃくちゃおもしろいと思います。

 普通のRPGより判断軸が多くて、普通のゲーム以上におもしろく感じています。このゲームに勝る運動系のゲームは現状ないですね。

──運動系ゲームに革命が起きた、と。

えぬわた:
 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』がオープンワールドのハードルを上げた、みたいな話がありますけど、それと同じように運動系のゲームのハードルを上げたのが『リングフィットアドベンチャー』だと私は思ってます。

──それだけ『リングフィットアドベンチャー』にハマっているえぬわたさんですが、操作するためのリングコンが4台目に突入しているという噂を耳にしました。

えぬわた:
 半年前の動画では4台目だったんですが、今は10台目【※】です。

※取材から数日後、えぬわたさんより「11台目に突入しました」とご連絡がありました。ですので正しくは11台目です。

 任天堂さんの名誉のためにも伝えておきたいのですが、通常プレイをしている分にはこんなに買い替える必要はありません。RTA走者をしていると少しでも状態が悪くなったら買い換えてしまうので、それで2ケタの大台に乗った感じです。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part5」より)

リングフィットRTAを始めたり「RTA in Japan」に出走したのは「例の和室」の友人がきっかけ

──えぬわたさんがRTA走者としての転機になったのは、「RTA in Japan Summer 2021」だと思います。過去のインタビュー記事でお話されていることが多いとは思うのですが、あらためて出走に至った経緯を教えてください。

えぬわた:
 「RTA in Japan」に出走したのはリングフィットRTAを始めてから1年4ヵ月ほど経ったころでした。

 それまでは普通にリングフィットRTAの「any%」と「100%」カテゴリに挑戦を続けていました。世界1位の記録も出せて、次に何を目指そうかと考えたところで、「RTA in Japan」に出てみたいという気持ちが芽生えてきたんです。RTA走者にとっての「RTA in Japan」って、球児にとっての甲子園みたいな感じで憧れの場所というのもありましたね。

 あとは、「例の和室」で話題にもなった部屋を貸してくれた友人からも「RTA in Japanに出てみないか?」と言われたのもあって、応募しました。

リングフィット RTA えぬわた
リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part7」より)

──友人からの誘いが出走のきっかけだったんですね。

えぬわた:
 ええ。そもそもリングフィットRTAを始めたのも友人のひと言があったからなんです。

──ええっ!? 

えぬわた:
 もともとは、フィジークという、ボディビルの上半身バージョンみたいな競技に向けて、週6でジムに通って体を鍛えていたんですが、コロナの影響でジム通いが難しくなってしまって。そんなときに家でもトレーニングできる『リングフィットアドベンチャー』と出会ったんです。

リングフィット RTA えぬわた

 それまで打ち込んでいたトレーニングのような全身全霊で打ち込むものがなくなってしまったので、その熱量のぶつけ先が『リングフィットアドベンチャー』に向かいました

 その熱量は通常プレイだけでは解消できなかったので、RTAの領域に興味を持つようになったんですが、リングフィットRTAをするとなると自分の身体を映さないといけない。でもその時は今よりもっと狭い部屋に住んでいたので画角的に全身を映し切るようなカメラポジションが取りにくかったり、そもそも配信環境すらありませんでした。

 配信に関する知識もなく、悩んでいた時に、その友人から「配信を手伝うからリングフィットRTAやらない?」と申し出があって

──まさかのベストタイミングで。

えぬわた:
 友人にはそういう悩みについては一切話していなかったので驚きました。当時は「なんだこの都合のいい話は……」と思いながら、友人の提案に乗った感じです。

 今思えば、自分がそういうことをやりたそうだとわかっていて、そのうえで言ってくれたんだな、と思います。とてもありがたいお声がけでしたね。

あれだけ話題になったのは実況の田口尚平さんのおかげ

──「RTA in Japan Summer 2021」のリングフィットRTAでは、同時接続18万人超え、Twitterトレンド1位。その後も「RTA in Japan」は続いてますけど、桁違いに注目を集めたRTAだったと思います。

えぬわた:
 ここまで話題になったのは実況してくださった田口尚平さんのおかげです。田口さんが実況で盛り上げてくれなかったら、あそこまで盛り上がらなかったと思います。

 あとは、見た目ですごいことがわかりやすく、ゲームをプレイしていない人でも楽しめるという面もあったのかなと。マッチョが一生懸命にゲームで運動しているというのが大衆にウケたんじゃないでしょうか。

リングフィット RTA えぬわた

──画面の絵面もインパクトがありましたし、解説だったり応援掛け声だったり演出面でもパワーワードの連続でものすごい濃い17分間でした。このあたりの打ち合わせってどのくらいされたんですか?

えぬわた:
 当日は私と実況と解説の3人にプラスして、配信手伝い2名の5人体制でやっていたんですが、まともに打ち合わせたのは当日だけだったんです。

 本番の数日前に田口さんから「ツイッターで掛け声を募集していいですか?」って確認がきたくらいで、後はすべて当日に準備したものでした。

──すごい……。

えぬわた:
  私は走る2〜3時間前に現地入りしたんですけど、私が柔軟とかストレッチをしてたりご飯を食べたりしてる間に、田口さんが私にインタビューをして、その後にTwitterで募集した掛け声をチョイスしてメモを作ってました。

 逆に即興に近かったので、「筋肉スイクンチャート」みたいなワードが流行る、といった事件も起きておもしろくなったんだと思います。実況と解説の打合せも直前に30分だけで、あとは全部アドリブです。本当に田口さんのすごさを感じましたね。

──ものすごい話題を集めていた当時の心境はどうだったのでしょうか。

えぬわた:
 じつは……私の中では「すごいことをやった」みたいな感覚はなかったんです。

 まったくないとは言わないまでも、自分としては今まで通りのことをやっただけというか。むしろ「RTA in Japan」で披露したのは「Beat World1」(ワールド1までクリア)カテゴリだったので自分としては大したことやってない感覚でした。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part7」より)

──いやいやいや……! 相当すごいことだと思いますよ(苦笑)。でも確かに、20時間以上走り続けるカテゴリに挑戦しているえぬわたさんにとってはそう感じるのかもしれませんね。

えぬわた:
 そうだと思います。なので当時一番思ったのは「バズるってこういうことなんだ!」ってことです。

 ただ、それも田口尚平さんのおかげですので慢心しちゃいけないと。YouTubeのチャンネル登録者数とかTwitterのフォロワー数とかは、あの時バズって伸びたものなので、自分の実力ではない。そこだけ勘違いしないように気をつけようと、あらためて身を引きしめるような思いが強かったと思いますね。

 友人からの「えぬわたさん自身は何も変わってないんだけど、自分の知っていたえぬわたさんのすごさが多くの人に伝わってすごくうれしい」というメッセージが印象に残っています。そういう友人を持っていてよかったな、と思いました。

「RTA in Japan」出走後は生活が一気に変わった

──「RTA in Japan Summer 2021」で大きな話題を集めた後、活動にどのような変化がありましたか?

えぬわた:
 もともと配信者ではなかったのですが、配信をするようになりました。あとは、いろいろとお仕事をいただけるようになったので、活動に伴う責任はどんどん大きくなっていきましたね。

 例えば、今までの配信は、カメラの画質もマイクの音質も悪く、自分の映像とゲーム画面を適当に組み合わせていただけだったんです。でも「Twitchパートナー」の権限もいただいたので、それに見合うような配信をしないといけない、というところで配信環境をちゃんと整えました。

──責任というところで、具体的に気をつけてることはありますか。

えぬわた:
 ちゃんと情報の告知を丁寧にすることですね。案件を受けたりインタビュー記事が公開されたりしたら、すぐにリツイートで拡散する。そういった基本的なことをすごく丁寧にやろうと意識しています。

 あとは、配信者としては当たり前だと思うんですけれども「配信をすること」ですね。

 私はそもそも配信者になりたくてなったわけでもないので、普通に過ごしてしまうとサボって配信しない状況になり得るんです。本当に当たり前のことなんですが、私にとって、じつはがんばってるところですね。

──ということは、最初にRTAに挑戦された時はまったく配信を考えていなかったと。

えぬわた:
 考えていませんでした。今でこそ練習配信もしていますが、当時はタイムを本気で狙いに行くRTAの本番だけ配信するくらいでした。だから年に2回とか、そのくらいの頻度ですね。だから生活とかも一気に変わりました

──生活の変化とはどのような?

えぬわた:
 配信を週3〜4回やるようになって、その分の時間を捻出する必要が出てきました。具体的には、仕事を終えた後にやることが配信になりました。

 あとは、土日の予定も入れられなくなりましたね。私が挑戦しているカテゴリは1日とか半日ぐらいかかるものなので、土日はどっちも潰れてしまうんです。

──リングフィットRTAで、文字通り生活が一変されたんですね。

えぬわた:
 配信を見ていただける方々には感謝しかありませんし、お声かけいただけるのは本当にありがたいお話です。

 ただ、私のインフルエンサーとしての活動では、ゲームから少しずつ離れないといけないな、とも思っているんです。

──ええっ、それはまたなぜでしょう……。

えぬわた:
 私は普段サラリーマンとしてゲームに関連する仕事をしているのですが、そんな状況でゲームの配信活動を続けようとすると、どうしても制約が出てしまうんです。

 本音としては離れたくないんですけど、自分のキャリアをあらためて考えると、配信活動としてはゲームと距離をとったほうがいいと考えています。

今後は筋肉中心の活動予定。フルマラソンで4時間切りも目指したい

──ラストラン配信以降の活動についてはどう考えていますか?

えぬわた:
 一旦は筋肉を生かした活動を中心にする予定です。家にウエイトトレーニングの機材がそろっているので、しばらくは筋トレ配信とかが多くなるかな、と。

 自分がさらにステップアップするには、ゲーム以外の何かと筋肉・運動を組み合わせないといけないと思っています。現在はその何かを探している段階というか。はっきり言ってしまうと決まってないんです。

リングフィット RTA えぬわた
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part9」より)

──今後をつづったnoteではTwitchを離れるとのことですが、配信活動じたいはどうお考えで?

えぬわた:
 YouTubeにて、できる限り続けていこうと思ってます。前述の筋トレ配信のほかに、『リングフィットアドベンチャー』の通常プレイもできればと思ってますね。

 また、離れるとは言いつつ、リングフィットRTAをやりたくなったときにはTwitchで配信しようと思っています。私としてはすごくいい環境というのもあり、完全に離れてしまうのは嫌なので。

──今後、挑戦してみようと思っていることはありますか?

えぬわた:
 フルマラソンに挑戦したいと思っています。過去に少しだけ4時間切りを目指して取り組んでいたのですが、4時間17分くらいの記録で終わってしまっているんです。

 プロ記録は2時間台で、4時間というのは世界的には決してすごいものではないのですが、市民ランナーとしては誇れるポイントになると思うので、目指したいと思っています。

 現在の自分が達成できない、でも自分が到達できるであろう限界を目指す、っていうのは自分の軸になるポイントですね。

──自分の限界に挑戦したい、という目標なんですね。

えぬわた:
 そうですね。世界一を取れない競技とかに挑戦したとしても、自分の今の実力だったらここが限界点だろうっていうところをひたすら目指し続けるんだろうなって思います。

──ストイックで尊敬するばかりです。リングフィットRTAから離れたあともえぬわたさんの筋肉を生かした活動を楽しみしています!

えぬわた:
 ありがとうございます! リングフィットRTAのラストラン配信が終わったら、ジムに行けることを今は楽しみにしています

 以前のような週6ペースでジムに通ってしまうと筋肉痛になってしまい、リングフィットRTAの練習に影響が出てしまうのでなかなかジムに行けなくて、全然ウエイトトレーニングができてないんですよ。

──リングフィットRTAのためにジムになかなか行けなかったと。ちょっとおもしろいですね。

えぬわた:
 RTAの能力向上のためにジム行きたいんだけど、リングフィットRTAの練習時間も必要なので(笑)。

 ジムに行った1日が取られるだけじゃなくて、筋肉痛でその後の1〜2日も取られちゃうので、けっこう痛いんですよね。リングフィットRTAなら13時間半やっても筋肉痛にならないのに、不思議です。

リングフィット RTA えぬわた

 取材を通してわかったのは、えぬわたさんの筋肉と『リングフィットアドベンチャー』愛は本物だということと、自分が到達できるであろう限界を目指すことで世界一になれることだった。それは、

毎日のようにさまざまなカテゴリに挑戦し続けたり
1週間も前からRTAのために体調を調整したり
世界一の記録を取ってもさらに記録更新を目指したり

 リングフィットRTAに真摯に向き合ってきた姿から学べたことである。

 またその話しぶりから相当な人格者であることもうかがえた。まるで、リングフィットRTAを続けたことで心技体のすべてを兼ね備えた存在になっているかのようだった。

 そんな、リングフィットRTAなどという誰もやりたいとは思わないことを2年以上続けているえぬわたさんの“卒業”にはすなおに「ありがとう」や「お疲れさまでした」を言いたいし、その筋肉と人間力を活かした今後の活動も応援したいと思った。

 ……久しぶりに、押し入れにしまったままのリングコンを取り出してみようか。

(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part9」より)
(画像は「マッチョのリングフィットアドベンチャーRTA100%負荷30世界記録解説(28h22m12s)Part18後半」より)

無敵時間よりえぬわたさんコラボグッツが販売中

 現在、えぬわたさんのラストランおよび誕生日を記念して、えぬわたさんがアンバサダーを務める無敵時間よりTシャツやパーカー、ジャージといったコラボグッズが2月12日まで受注限定販売されています。気になった方はぜひチェックしてみてください。

【無敵時間】

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