1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

日本版ライドシェア 新しい「足」スタート1カ月、国会議員の見た現状と今後の課題

日刊スポーツ / 2024年5月4日 7時40分

ライドシェア用の自家用車の様子を視察する超党派「ライドシェア勉強会」のメンバー

<情報最前線:ニュースの街から>

一般のドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「日本版ライドシェア」が4月8日にスタートしてから、まもなく1カ月となる。タクシー不足が指摘される地域や時間帯にタクシー会社の管理下での運行という日本独自の形で始まったが、実際にどんな形で行われているのか。超党派の国会議員でつくる「ライドシェア勉強会」の視察に同行し、現状や今後の課題について聞いた。【中山知子】

   ◇   ◇   ◇   

■隙間時間を利用

4月8日にまず東京で始まった「日本版ライドシェア」。参入した「日本交通」の葛西営業所(東京都江戸川区)を超党派の勉強会メンバーが4月下旬視察に訪れた。ライドシェアに対応する自家用車の車体やタイヤの整備、ドライバーの出発前の点呼や研修の様子を確認し、会長の小泉進次郎元環境相(自民)と会長代行の馬淵澄夫元国交相(立民)は、フロントガラス左上に「ライドシェア」と青く光った自家用車に体験試乗した。

世界各国のライドシェアの形態と異なり、「日本版ライドシェア」は、乗客の安全安心を確保する観点から事故防止対策のノウハウを持つタクシー事業者を主体とする日本独自のシステム。その上でタクシーが不足する地域や時間帯に、一般ドライバーの自家用車を活用する形となっている。

日本交通の川鍋一朗取締役によると、ドライバーの応募は日々寄せられ、5月中には、東京でのライドシェアの車両は100台に届く見通しという。

同社で現在登録しているドライバーは男性が9割で30~50代が中心で、ドライバー職の経験者がほとんど。隙間時間を利用して業務に当たるケースが多く「最初から稼ぐ人も生まれている」という。

現在日本でライドシェアが認められているのは、タクシー車両が不足すると国交省がアプリをもとに算出した曜日と時間帯。東京の場合、4種類の曜日と時間帯が定められ、例えば月~木曜日は午前7時~同10時台。この時間帯での不足車両数は上限1780台(スタート時)と算出されている。実際に朝の時間帯の利用が多いといい、ドライバーの30代男性も、午前9時半ごろまでの時間帯は依頼が相次ぐと証言。「いつもは待つが、3分で来てもらえて助かったと言われたこともあった」という。

■天気予報と連動

政府の資料によると、4月8日の開始から1週間の15日までに東京、神奈川、京都の3地域で計2959回の利用があり、東京では2308回に及んだ。事故などの報告はなかったという。

視察後、進次郎氏は取材に「ドライバーさんが前向きに働かれているのを確認でき、安全管理をしっかりした上でスピード感をもって実現していただき、あらためて感謝したい。タクシーを呼んでもなかなか来ないという声が小さくなっていく方向に近づいているのは間違いない」と述べ「安全管理、運行の丁寧さは世界で最も胸を張ってやっているといえる」と述べた。その上で「タクシー会社管理の下だからこそこれだけスピード感をもって始められた。日本では、これしかなかったのではないか。公共交通全体ではバスや鉄道の数が減っている所、タクシーがない所は全国にたくさんある。そういうところも含めて議論していかなければいけない」と述べた。

馬淵氏は「タクシー事業者が一生懸命取り組んでいること、ドライバーの方も自分たちの空き時間でお金を稼ぐことができるというウィンウィンが成り立っている。これからどれだけドライバーが増えていくか課題はあるが、まずスタートすることがいちばん大事だった。分からないまますぐに市場を開放して混乱を招いては、消費者のためにならない。ドライバー不足や消費者の足が不足しているところを解決するため『ステップ』として進めたのは正解だった」と訴えた。

今後については、より「効率的」な運用への期待の声も出た。視察した議員からは、祭りや花火大会など事前に予定が把握できるイベント、クルーズ船来港時などを念頭に、稼働時間を柔軟に変えられるなどの対応を求める声もあがった。天気予報と連動した運用案に言及した進次郎氏は「天気予報は難しいが、気象庁などとうまく連携し精度を上げて、国民のみなさんへの必要な提供を実現できる制度改正をスピード感をもってやっていくための後押しができれば」と話した。

一方、岸田文雄首相は先月22日のデジタル行財政改革会議で、タクシー会社以外の他業種の参入について今後、論点整理した上で、5月中に報告するよう関係閣僚に指示した。将来的には参入業種の拡大を求める声もある。新しいサービスで、利用者側への浸透も今後の課題の1つだ。試行錯誤しながらも利便性を追求する多角的な戦略が、さらに求められることになる。

■地域の足確保へ 自治体主体検討広がる

現在、都市部などで行われている「日本版ライドシェア」とは別に、バスやタクシーなどの移動手段の確保が難しい地方で、自治体やNPOなどが運行主体となってライドシェアを行う「自治体ライドシェア」の動きも拡大している。

道路運送法第78条第2号の「自家用有償旅客運送」を活用したもので、時間帯や運賃に関して今年1月から規制が緩和されたことで、導入に意欲を示す自治体が増加。全国の自治体首長有志でつくる「活力ある地方を創る首長の会」が今年3月に発表したデータによると、早期の実装に向けて検討を始めた自治体は、今年1月末段階の21自治体から、3月には44自治体に倍増。「地域の足」の確保は都市部よりも深刻とされ、今後も増える見通しだ。

■東京&京都から 順次地域が拡大

「日本版ライドシェア」は先月8日、まず東京と京都の一部地域を皮切りにスタート。その後、神奈川や名古屋の一部地域でも運用が始まった。今月中に、札幌、仙台、さいたま、千葉、大阪、神戸、広島、福岡の都市部を中心とする8地域でも順次始まる見通しだ。また、これから本格的な観光シーズンに入る長野県軽井沢町が実施に向けた申請を行い、先月26日からスタート。自治体申請の形で国が認めるのは同町が初めて。富山、石川、福井、岐阜、静岡各県の計13区域でも、地元のタクシー事業者が導入の意向を示し、順次サービスが始まる。

日本版ライドシェアを利用する際は「GO」「S.RIDE」などタクシーの配車アプリで予約し、目的地と運賃を事前に確定させる。運賃はタクシーと同水準で、すべてキャッシュレス決済となる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください