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湯川れい子さん提唱「エターナルソング」とは?中高年が歌える新しい日本の歌をお披露目

日刊スポーツ / 2024年5月13日 7時9分

「エターナルソング」について語る音楽評論家で作詞家の湯川れい子さん(撮影・小沢裕、撮影協力・ホテルアラマンダ青山)

<情報最前線:エンタメ 音楽>

音楽評論家で作詞家の湯川れい子さん(88)が、長く歌い継がれる大人の歌「エターナルソング」を提唱している。その普及のため、昨秋から「エターナルソング・コンテスト」として歌詞やメロディーを公募。6月9日に都内で、授賞作品の披露コンサートを開催する。エルビス・プレスリー、ビートルズ、マイケル・ジャクソンら世界のビッグアーティストを取材してきた湯川さんに、同ソングを提唱する理由などを聞いた。【笹森文彦】

    ◇    ◇    ◇  

エターナルとは「永遠の、永久の、不朽の」などの意味である。湯川さんは大人の心に寄り添い、永遠に歌い継がれ、時代を生き抜く歌たちを「エターナルソング」と名付けた。歌謡界の現状などから提唱した。

湯川さん 新しい歌は、ティーンエージャーとかアニメとか、今の文化の主体を担っているところから生まれてきます。いい歌はありますけど、30代や40代、ましてや50代以上の方には歌えない。そういう方々が歌える新しい歌がほしいな、という願望がありました。

邦楽で、湯川さんは演歌を日本のすぐれた文化で、エネルギーのある大人の歌と評価している。事実、テレビでは昭和歌謡の番組が、連日のように放送されている。しかし、現状は配信が主流の時代となり、町のレコード店は姿を消した。新しい演歌を買う人、歌う人は減少している。歌える歌がないから、昭和歌謡がもてはやされるのだろう。

湯川さん そんな中で、今何が一番歌われているかというとシャンソンなんです。全国に、30代から50代の女性たちがシャンソンを歌うグループが多数あって、活発に活動しています。

シャンソンはフランスの歌。喜怒哀楽や情景を詩的な歌詞と、美しいメロディーで歌い、聴く者の心に深く響く。ただ「ミロール」や「愛の讃歌」(いずれもエディット・ピアフ)などが、日本語詞でどんなに歌われようと、印税はつくった国に支払われる。映画や文学では翻訳は職業として役割が確立しているが、音楽では著作権上の権利の獲得が難しいという。

湯川さん じゃあ、日本に著作権が残るシャンソンのような歌を、少しでも増やしていきたいなと思った。広く公募することで作家も育てたいと思った。そして、演歌やシャンソンに代わる言葉として何かないかと考えた時に、半永久的に歌ってもらえる歌という意味で「エターナルソング」という言葉を考えたんです。

中高年が歌える、新しい日本の歌。それがエターナルソングである。

湯川さん 私は日本音楽療法学会にも(理事として)います。ビートルズのデビュー(1962年)から60年以上です。例えば介護施設にいらっしゃる70代、80代の方は、ビートルズ世代なんです。そういう方たちが歌いたいのは「赤とんぼ」でも「ふるさと」でもないんです。今、歌える新しい歌がないんです。

「上を向いて歩こう」(坂本九)は、63年前の1961年(昭36)に発表された。今も歌い継がれ、震災などが起きれば被災者を励ます歌となる。まさにエターナルソングである。

湯川さん 今、新しいものをつくって、すぐに(「上を向いて歩こう」のような)エネルギーは持てないですよ。でも、時間をかけて歌っていただいている間に、定着することも考えられます。エターナルソングという曲づくりが、「上を向いて歩こう」のような曲になっていく端緒になればと思っています。

作詞家として「涙の太陽」(エミー・ジャクソンほか)「ランナウェイ」(シャネルズ)「センチメンタル・ジャーニー」(松本伊代)「六本木心中」(アン・ルイス)など、数々のヒット曲を手がけた。どの曲も時代を生き抜き、今も歌い継がれている。

湯川さん 「恋におちて-Fall in love-」(小林明子)は、(エターナルソングのような)意図を持って作った歌ではなかった。子育て中に「不倫の歌を」と依頼されて、「不倫! そんな歌、作れないよ!」って、苦しみながら書いた(笑い)。作家が何も意図しないで、苦しみながら作ることも大切です。考えて残るものじゃないですから。買わないと当たらない宝くじと同じで、こっちは作らないと残らないですから(笑い)。

ジャズやロックのように、エターナルソングが音楽ジャンルとして確立されるには、長い時間がかかることは十分に承知している。

湯川さん 考えている以上に大変です。でも、新しい歌を作って、歌っていこうよという思いが、皆さんの心に残ってくれる1つのきっかけになればいいなと思います。元気でいる限りは提唱し、コンテストも続けていきたいと思います。

■コンテスト審査委員長

「エターナルソング・コンテスト」は湯川さんが審査委員長を務め、昨年10月から歌詞を募集。657通もの応募があった。その中から優秀10作品を選び、今年1月から同10作品の作曲を募集。厳正な審査を経て、グランプリなど5作品が決定した。

審査員は日本作詩家協会会長の石原信一、日本訳詩家協会会長の加藤登紀子、音楽プロデューサー亀田誠二、デザイナーのコシノジュンコ各氏ら8人。

5作品のお披露目コンサートを、6月9日に東京・渋谷区の古賀政男音楽博物館けやきホールで行う。池畑慎之介、クミコ、小林幸子、美川憲一、新人の鬼無里(きなさ)まりの5人が披露する。上位2曲は第一興商のカラオケDAMに収録される。湯川さんは「AIで歌づくりのできる時代ですが、今を生きる人の言葉、曲として伝わってきました」と評価した。なお、コンサートの当日券はない。

◆湯川(ゆかわ)れい子 本名・湯野川和子。1936年(昭11)1月22日、東京生まれ。女優を経て、雑誌「スイングジャーナル」への投稿をきっかけに、60年にジャズ評論家となる。ラジオのDJとしても活躍。ディズニー映画「美女と野獣」「アラジン」など日本語詞も手がける。「幸福へのパラダイム」(90年)「時代のカナリア」(22年)など著作多数。日本作詩家協会の6代目会長。

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