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東アジアに向いて来た「アメリカ外交のプライオリティ」はまた変わるのか

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年7月18日 11時35分

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ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領(アメリカ・ワシントン)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月16日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。現地7月15日にホワイトハウスで行われたバイデン大統領とドイツのメルケル首相の首脳会談について解説した。

ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領(アメリカ・ワシントン)=2021年3月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカとドイツが首脳会談

アメリカのバイデン大統領は現地7月15日、ホワイトハウスでドイツのメルケル首相と会談した。専制主義と位置づける中国やロシアを睨んで民主主義陣営の連携強化に向け協議し、トランプ前大統領時代に揺れ動いたアメリカとヨーロッパの同盟関係の立て直しを目指す。アメリカ政府によると、両首脳は会談後にアメリカとドイツの関係強化の道筋を示す「ワシントン宣言」を発表するということである。

飯田)共同会見のなかでバイデン大統領は、「中国などが自由で開かれた社会を弱体化させようとすれば、民主主義の原則や普遍的な権利のために立ち上がる」と述べたということです。

宮家)メルケルさんがこれと同じ内容を言ったかどうかがポイントなのでしょうね。記者会見だけではなくて、どんな文書が公表されるのかに興味があります。

飯田)メルケルさんが。

宮家)日本では、ドイツが中国に傾斜している部分があったので、メルケルさんが中国に対して厳しい態度を取るかどうかに関心が高いのだけれど、欧米の新聞を読んでいると、彼らの関心はロシアとの関係をどうするか、NATOをどうするか、同盟国としてどういうことをやるのか、の方が高いということです。アメリカはロシアからのガスのパイプラインである「ノルド・ストリーム2」をかなり気にしているのです。戦略的に考えれば当然な話で、ドイツがロシアのエネルギーに依存するということは、どういう安全保障上の意味があるのか、日本でもサハリンからパイプラインでガスを持って来るなどという話もありました。

飯田)ありましたね。

宮家)それがうまく行かないのは経済的な理由もあるのですが、そもそもエネルギーをロシアに依存していいのかどうかという問題ですよ。それが東欧諸国では、実際に弊害として出て来ているわけですから、今回の米独首脳会談でもロシアとの関係が前面に出て来るだろうと思います。

飯田)なるほど。

宮家)メルケルさんはこれが首相としての訪米は最後なのですけれども、彼女は過去十数年間ドイツの力を背景に、独自の外交をやって来たわけです。日本に来ないでいつも中国に行って、我々からすれば、いかがなものかというところもあったのですが。

時代によって変わるアメリカ外交のプライオリティ~ここへ来て東アジアへ向いて来たのだが

宮家)最近のアメリカの外交を見ていると優先順位が変わりつつありますね。バイデン政権はまず日本と中国についての意見のすり合わせをする、そして2プラス2では台湾にも言及する。それから日米首脳会談をやって、2+2会合の成果を確認した上で、G7で中国と台湾に言及し、さらにNATO首脳会議のためヨーロッパにバイデンさんが行った。最後にバイデンさんはプーチンさんにも会った。この一連の流れの背景としては常に「中国に対する懸念」がある、その意味では一貫した外交だと思います。

飯田)中国への懸念。

宮家)ところが最近、嫌な予感がするのです。アメリカの外交関係者は、「アジア・中国」だけでなく、「欧州・NATO・ロシア」、それから「中東・イラン」、この3つが常に頭のなかにあって、プライオリティがそのときどきで変わって行くのです。冷戦時代は当然ソ連が最優先だった。9・11以降はテロとの戦いになって関心がイランに流れて行った。これからイランとの核合意を復活させるかどうかという話になったのですけれど、結局ロウハニさんももうやる気が失せてしまった。

イランのロウハニ大統領[17日にイラン大統領府が提供]=2021年2月17日 AFP=時事 写真提供:時事通信

イランとの核合意の再開が長引くことでアメリカの東アジアへの関心が低下

飯田)共同通信は15日夜の段階で、「イラン、核交渉妥結を断念」という見出しを出しています。

宮家)アメリカが全然譲歩する気がないのだから、当たり前です。アメリカは元の合意に戻るなんて言いながら、「戻ったらすぐに新しい合意を結びましょう」と言っているわけです。新しい合意の内容は何かと言うと、「イランが中東各国でちょっかいを出しているのを全部やめろ」、「ミサイル開発などはするな」ということです。そんなものイランが受け入れられるわけないですよ。それを拒否して2015年にやっとできあがった合意なのだから。そうなるとやはり中東もきな臭くなって来る。ロシアもまだアメリカへの対抗心が強いから、ウクライナだけでなく、ベラルーシでも何が起きるかわからない、中東も、特に湾岸で何が起きるかわからない。

飯田)ロシアも。

宮家)中東関係ではイスラエルに強硬派がいます。それからワシントンにも強硬派がいます。当然、テヘランにも強硬派がいます。あの強硬派の人たちがみんな共有していることは、「あいつらが悪い」と相互批判です。それによって各国の強硬派が再び「美しき共存関係」になったら、結局、またアメリカの外交的なリソースを中東に持って行かれてしまうわけです。あるいはロシアがまた変なことをやれば、アメリカの関心が今度は欧州に持って行かれてしまう。私がいちばん心配しているのは、その結果、アジアへのアメリカの関心が低下してしまうということなのです。

2001年「9・11」のときと同じ現象

宮家)それは2001年の9・11のときに、まさに起きたことです。もともとジョージ・W・ブッシュ大統領は中国について、かなり懸念を持っていたのです。対中政策を2001年の段階で変えようとした兆候があったのだけれども、9・11が起きて、これからはテロとの戦いだとなってしまった。そして中国は、「うちもテロとの戦いがあって、ウイグルという人たちがいるので、うちはそれを取り締まって協力しますよ」という形で中国はアメリカと関係を持ってしまったのです。

飯田)そこで結んでしまった。

宮家)その結果、いまのウイグル問題があると思うし、その後アメリカは中東に傾斜していったので、東アジアにおいて中国のフリーハンドが増えてしまった。これは20年前の我々の教訓です。そう考えると、いまはアメリカの関心がようやく東アジアに寄って来た、インド太平洋に寄って来たのですから、他の地域はすこし静かにしておいて欲しいのです。そうしないと、アメリカがインド太平洋で本来やるべきことができなくなってしまうと私たちは思う。けれど、ヨーロッパの人たちも、中東の人たちもそうは思わない。彼らの地域へのアメリカの関心が減っているから、むしろ自分たちの方にアメリカの関心を向けさせたいという人たちもいる、そこが気になります。

飯田)それに加えて、アフガニスタンからアメリカは9月までに撤退するという話です。

宮家)これは仕方がないのですけれどね。アフガニスタンで何年戦っても、結果は出ませんから。それに中国が入って来るという報道もあります。中国とアフガニスタンは国境がつながっていますからね。中国にとっても、東南アジアだけでなく、中央アジア、アフガニスタンの安定は大事なのです。アフガニスタンでまた変なテロリストが出て来れば、それがウイグルに来る可能性もあります。つまりアフガニスタンは彼らにとっても安全保障の問題なのです。我々はそれで中東に関心が戻って、アメリカ外交が「先祖返り」されてしまうと困る。せっかくいい雰囲気で動いて来ていた米の対インド太平洋政策が、中断はしないにしても、いろいろな障害に直面する可能性があるという意味では、ちょっと怖いなと思います。私が間違っていればいいのですけれど。

アメリカの最大の関心が中国であることは変わらない

飯田)日本としては、アメリカを巻き込み続けるために、ホワイトハウスに向けて工作をするということですか?

宮家)アメリカもよくわかっていますから、工作するというほどのことではありません。過去20年間、中国に対してやるべきことをやって来なかったということを、彼らはわかっているわけです。オバマ政権の2期目の時点でようやくわかったわけで、今がオバマ政権の3期目だと思えば、その延長上で、中国との関係が厳しくなるのは当然です。テロとの戦いをとりあえず置いて、「やはり中国が問題だ」と動いているのは間違いないので、完全に180度元に戻るとは思いませんけれど。

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