【腰痛】はアイドルの追っかけで治る?「脳が起こす」2つの痛みとその処置
OTONA SALONE / 2019年6月13日 11時0分
慢性腰痛の原因は人によって千差万別、その対策も様々です。
現在、日本腰痛研究開発機構で代表をつとめる私も、かつてIT関係の仕事をしていて、慢性的な腰痛に悩まされていました。
それから自分の腰にピッタリあったマットレスを独自に開発し、今では腰痛に苦しむ人を一人でも多く救うために腰痛専門の研究機関を設立。腰痛に関わるあらゆる専門家に話をうかがい、さまざまな角度から原因と対策を研究しています。
今回ご紹介するのは、痛み専門医の河合隆先生に聞いた、脳と腰痛の関係。
意外に思うかもしれませんが、腰はまったく悪くないのに、脳の勘違いで痛みが出ていることが本当にあるんです!
脳が「慢性的な痛み」を引き起こしているケースもある
何人もの医者が見て、カウンセリングをしても、本当に原因がまったく考えられないタイプの慢性腰痛で悩んでいる人は少なくありません。痛いのだから体のどこかに原因があるはずだと思うかもしれませんが、事実、腰にはまったく異常がないのに痛みが出ることは多々あります。
その場合、「脳の不調」(脳の機能不全や脳の勘違い)が痛みの原因である可能性があります。
脳が不調だから腰が痛い、と言われても、ピンとこないですよね。
「痛み」はどこからくるのか。その存在の位置は?
ではあなたは、痛みはどこにあると思いますか? 例えば膝を擦りむいたら、膝から血が出たりしてズキズキと痛むので、痛みは膝にあるように思うのではないでしょうか。
しかし実際はそうではありません。そもそも痛みは感覚であり、脳が認識して初めて自覚するものです。ですから厳密にいえば、痛みは膝や腰ではなく、脳に存在しているともいえます。
「幻肢痛」という症状をご存知でしょうか。ケガや病気によって腕や脚を失ってしまった人が、失われた部分に痛みを感じる症状です。痛みは腕や脚にあるものではなく、脳が認識していることを示す一つの良い例だと思います。
「脳の不調」には2つのタイプがある。過敏、ストレス
痛みを生み出す「脳の不調」には2つのタイプがあります。
1)過敏脳=痛みに対して脳が過敏になっている状態
2)ストレスの身体化=ストレスが痛みとして体に出てくる状態
まず過敏脳について詳しく説明しましょう。
脳が痛みに対して過敏になっている場合、普段は痛みとして感じない刺激に対しても過剰に反応して、「痛い」という信号を出してしまいます。
例えば、長い間寝たきりになっている入院患者さんなどは、過敏脳になりやすい傾向があります。実際に、ずっと同じ姿勢で寝ていた方が少し姿勢を変えただけでひどく「痛い」と訴える例があります。
また、骨折して長い間ギプスで固定されていた場合にも、過敏脳になりがちです。ギプスをはずすと、ちょっとした刺激に対して強い痛みを感じることがあります。
なぜ「過敏」が起きる?脳の本来の機能のほか「不安」も原因に
どうしてこんなことが起きるのでしょうか。
一説では、脳が本来持っている「痛みを抑える機能」が低下しているからだと考えられています。
通常、体をどこかにぶつけるなどして強い刺激が与えられても、過剰に痛みを感じないように脳自体が痛みを抑えてくれています。この機能が、何らかの障害やストレスによって弱まってしまうのです。
これは腰痛でもよく起こります。一度腰痛を発症すると、「また痛むかもしれない」と痛みに対する不安感や恐怖が生まれます。それがストレスとなって、脳の痛み抑制機能が阻害され、過敏脳になってしまうことがあるのです。過敏脳になると、ちょっとしたことで痛みを感じるようになってしまい、腰に異常がなくても慢性的に痛むようになると考えられます。
驚くべき事実。ストレスは身体に明らかに現れる
次に、脳の不調のもう一つのケースである「ストレスの身体化」について説明します。
脳は、ストレスに耐えきれなくなると、そのストレスを身体に逃がす働きがあります。皆さんは、ひどく緊張したときや、とても嫌な予定があるときなどに、お腹が痛くなった経験はないでしょうか? 休日はなんともないのに、会社や学校に行く前になるとお腹が痛くなるといった話を聞いたこともあるかもしれません。これが、ストレスが身体に現れる「ストレスの身体化」の一例です。
実は腰痛も、このようなストレスの身体化が原因で発生している可能性があります。
脳は「不安」から「痛み」を呼び起こしてしまう
腰痛を抱えていると、体を動かすときに不安になったり、イライラしたりします。
不安や怒りといったネガティブな感情は、ストレスそのものです。腰には何の異常もない場合でも、例えば脳が「○○すると腰が痛くなるのではないか」と不安がると、そのストレスが身体化して痛みが発生してしまいます。
脳の研究では、「不安だ」(情動・感情)と「痛い」(感覚)は、最終的に脳内のほとんど同じ部分で感じられていることがわかっています。「不安だ」と思うことと「痛い」と感じることは連動しているのです。
では「過敏脳」はどう治せばいいのか?少量ずつの刺激が効く
脳が過敏な状態を元に戻すには、少しずつ刺激を与えて不安感を取り除いていく必要があります。
具体的には、多少痛みを感じても少しずつ腰を動かすようにしてみることです。そうすると、最初は少ししか動かせないかもしれませんが、徐々に痛みなく動かせる範囲が広がっていきます。
なぜかというと、脳は刺激を与えられているうちに、「このくらいは大丈夫なんだ」と少しずつ認識するようになるからです。また、運動によって「脳内モルヒネ」といわれる鎮痛作用のあるホルモンが分泌され、脳の痛み抑制機能を回復させるからだとも考えられています。
軽いストレッチをしてみる、コルセットをしている時間を減らしていくなど、腰に対する刺激を少しずつ加えていきましょう。
ただし、極端に痛みが強くなるような動かし方は禁物です。強烈すぎる刺激を与えると、かえって脳が過敏に反応してしまいます。
「ストレスの身体化」は「コラム法」で認知を修正する
ストレスの身体化を解消する方法を、ここでは2つ紹介します。
一つは、「コラム法」を使った認知の修正です。
認知というのは、物事の捉え方や考え方。ストレスになっているネガティブな考え方を、ちょっとずつ変えていくのです。
例えば「痛みのせいで私の人生はおしまいだ」と考えてしまうところ、「痛くても、できることからやってみよう」と考え方を変えてみます。
「痛みがあるのは嫌だけど、痛みがあってもできることはある」とプラス思考で考えてみるのです。
しかし、ネガティブ思考の人に「ポジティブになれ」といっても、そう簡単には変われるものではありません。
そのような方にオススメなのが「コラム法」です。コラム法は、自分がとった行動の状況、そのときの考え、感情、気分をノートなどに書き留めることによって、自分の行動や思考を客観視するものです。うつ病治療や禁煙にも使われています。
例えば、休日に出かけた際に腰が痛くなったら、その瞬間は、「せっかくの休日なのに最悪だ」と思ってしまうかもしれません。
しかしコラム法を使って後から冷静に考え直すと、「腰が痛くても出かけられてよかった」とか「痛くなったけどやりたいことはできた」と別な考え方をすることもできるはずです。
すると、また出かけよう、次は別のこともやってみようと行動が変わり、痛みを怖がっていた脳のストレスが徐々に緩和されていくのです。
ウソみたいな本当の話。「綺麗な写真を見る」と痛みがとれてしまう理由は
楽しいことをしたり、見たり聞いたり、想像したりして認知にポジティブな影響を与えることも、認知行動療法の一つです。
例えば、歌手の氷川きよしさんの大ファンだという慢性腰痛の方がいます。いわゆる「追っかけ」のようにして各地のコンサートに出かけられるのですが、コンサートのときはまったく腰の痛みを感じないといいます。
このように自分の好きなことをしているときには、ワクワクして脳内にドーパミンという成分が出ます。ドーパミンはやる気や幸福感に関係している神経伝達物質であり、痛みを軽減する作用もあります。ドーパミンがバランスよく出ていると、脳はポジティブな環境になります。
楽しいことをするだけでなく、美しいものを見る、好きな音楽を聴くなど、視覚や聴覚を通して脳にポジティブに働きかけることもできます。
そこでここでは、痛み専門医・河合隆志先生の著書『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』(アスコム)の中から、「脳が驚く写真」「脳が元気になる写真」「脳が喜ぶゲーム写真」「脳がリラックスする写真」「脳が安心する写真」を1枚ずつ引用して紹介していきます。
写真の使い方は次の通りです。
・楽な姿勢で、40〜50センチくらい距離をとって眺める
・写真に添えられた「痛みをとる格言」をじっくり3回読む
・写真を30秒ほど眺める
本来は1日5枚くらいを毎日眺める習慣にしていただくものですから、ここで紹介しているのはその一部の「お試し版」のようなものと考えてください。
「脳が驚く写真」
出典:『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』P48、P49
「脳が元気になる写真」
出典:『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』P64、P65
「脳が喜ぶゲーム写真」
出典:『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』P78、P79
「脳がリラックスする写真」
出典:『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』P98、P99
「脳が安心する写真」
出典:『痛み専門医が考案 見るだけで痛みがとれるすごい写真』P108、P109
さらに詳しく知りたい方はこちらをチェック!
『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』
≪腰痛ゼロを目指す専門家集団 日本腰痛研究開発機構さんの他の記事をチェック!≫
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