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誰も教えてくれなかった。更年期の「性のこと」ってどうすればいいの?

OTONA SALONE / 2021年4月25日 20時0分

閉経の前後5年を一般に、更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45~55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。

私ってもう更年期なの? みんなはどうなの?

オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)

【100人の更年期#47】

 

プロフィール

Mさん 51才、管理栄養士。12歳年上の夫と娘2人で都下に暮らす。
病院に勤務していたが、3ヶ月前に退職。今は専業主婦として受験を控えた次女のサポートをしている。

 

44歳、中学生の娘が寝ている横で「毎晩求めてくる」夫

Mさんは24歳の時に、12歳年上のご主人とお見合い結婚。2人の娘さんを育て、大変なこともあるけれどごくごく普通の恵まれた日々を過ごしてきました。

 

「会社員の夫は、真面目な性格。特に趣味もなく、友人から『ご主人は奥さん自体が趣味だね』なんて揶揄されるくらい私にベッタリなんです」

 

ベッタリ?と聞き返すと、Mさんは少し言いよどみ、一息おいてから続きを話し始めました。

 

「ちょっと言いづらいことなんですけど、セックスがほぼ毎晩なんですよ」

 

毎晩? いま、ご主人が63歳になっても?

 

「そう。性生活についての相談ってよっぽどの人にじゃないと話せないじゃないですか。毎日セックスってなんとなく普通のことだと思ってたら違うんですね、40歳過ぎてから友人から聞いたりして初めて知りました」

 

これ言っていいのかな……と小さな声で迷いながら、Mさんは続けます。

 

「我が家は次女が中学生になってからも家族が同じ部屋で寝ていたんです。それでも、毎晩なんです。さすがに思春期の娘の寝ている側でっていうのが辛くなってきて、私は性欲が全くなくなって。やがて苦痛を感じるようになりました」

 

たぶん、この時が私の更年期の始まりだったと思うんです、とため息。

 

「夫のことを嫌いになったわけではないんですが、もう身体が反応しないですよね。ホルモンバランスなのかな、濡れづらくなって性交痛は出てくるし、面倒くさいし。

 

私への執着のような執拗なセックスから逃げたくて、夫が寝るタイミングになっても居間でテレビを見ているふりをしてそのままソファで寝たり、昼夜逆転の生活にしてなるべく夫と過ごす時間を減らしたりしていました」

 

46歳、夫の顔を見たくなさすぎて、深夜勤務のライン工場へ

Mさんは管理栄養士の資格を持っているので、出産後もパートで学校や病院などの仕事を続けてきました。

 

「でも更年期を感じるようになってから、予算内で献立を考えたり、カロリーの細かい計算をしたりするのが面倒になってきてしまって。『何も考えずにとにかく単純作業がしたい』という思いと『夫とのセックスを避けたい』という気持ちからコンビニ弁当を詰めるという工場の仕事をはじめました」

 

何も考えずにラインで流れてきた弁当箱に惣菜を並べていくだけ。それが楽しくて楽しくて、アボカドをどれだけ綺麗に扇型に並べるかに集中して他のことを忘れられるのが嬉しかった、とMさんは言います。

 

「なるべく夜の10時から朝の6時までのシフトにして、夫とは朝食を作ってあげる以外、顔を合わせないようにしました。年末なんて、おせちの詰め込みの作業で大忙しで、人手が足りなくなるんですよ。だから1週間続けて早朝から夜中までシフトに入ったりしていました」

 

仕事ぶりを信頼され、管理栄養士の肩書きも評価されて、上のポジションにという誘いもありました。

 

「でも断りました。やる気もないのに仕事に対して責任を追うのも嫌だし、とにかく働いている間は単純作業だけに没頭したかった」

 

その頃の自分は周囲から見たら怖かったはず、と振り返ります。鬱のような沈んだオーラを出し、休憩時間も誰とも雑談せず、ひたすら詰め込み作業だけしていたから。

 

48歳、夫が定年退職。逃げるように管理栄養士として再就職

そんなMさんが48歳の時に、ご主人が定年退職しました。

 

「それまでも夫から逃げまくっていた生活だったのに、無趣味な夫はやることもなくただただ家にいます。それでもまたセックスしなくてはならない苦痛。今度は、次女の大学費用のためにと、思い切って大学病院の管理栄養士として再就職しました」

 

元気に働き始めたMさん。娘さんたちもご主人とは時間をずらして生活した方がいいと言ってくれ、背中を押してもらえました。

 

「でも、理想と現実って違うんですよね。新しい勤務先では、スタッフと馬が合いませんでした。じつは管理栄養士って、調理サイドと医療サイドのつなぎ役なんです」

 

調理師さんたちからは厳しい注文が飛んできます。食事のケアをする病院職員さんからも、料理にあれこれクレームが出ます。人の命を預かる病棟で、みんな必死だから仕方ないけれど、そこまで言わなくても……と凹むような言葉が飛び交うことも。

 

さらに、入院している全ての患者さんの分を用意しなくてはならないという時間との戦い。

 

「もちろん私も調理や配膳に参加しますけど、それでも人手が足りなくて……。朝の3時半に起きて4時半には通用口を開けて、夜は次の日の仕込みのために21時まで働く毎日。いくら家にいたくない私でも、さすがに身体が辛かった」

 

さらには、後輩の20代の管理栄養士のお手本にならねばと悩み事の相談に乗ったり、彼女たちの私生活にも踏み込んでいました。

 

「私、人生の先輩だもん!くらいの思いがあったんですね。そして、家では次女の部屋で寝るようにして、夫との接触は引き続き避け続けていました。何度か夫に仕事について文句も言われましたけど、定年退職した夫は無収入。私が仕事してるんだから文句は受け付けないって言えるようになりました」

 

51歳、職場で「地雷」と呼ばれていた自分に気がつかなかった

朝の3時半起床、夜は帰宅後にすぐ寝るという生活を初めて3年過ぎた頃、職場で事件が起こります。後輩の管理栄養士の女性が男性の調理師からセクハラを受けていると訴えがありました。

 

「私はびっくりしてしまって、彼女のために奔走したんです。病院職員に改善を求めたり、彼女の心のケアをしたり。持ち前のお母さん根性みたいなもの全開で、彼女を守らなくちゃという思いで職場全体を巻き込んでしまったんです」

 

彼女の仕事量が楽になるようにとシフトを組んだり、送り迎えをしたり、話もなるべく聞くようにしてアドバイスもしていたつもりでした。

 

「でも、ある日病院職員さんから言われたんです。その彼女が、Mさんが私の人生に口出ししてくるって相談されたって。あれ??と肩透かしを食った気持ちでした」

 

彼女のためと思って張り切ったつもりだったのに。そして追い討ちをかけるように職員さんが言いました。

 

「職場ではあなたは地雷って言われてるよ。だから彼女にも地雷踏んだと思って聞き流してって言っておいたよと。私、扱いにくいって職場の仲間から言われていたんです。そんなつもりじゃなかったのに……初めて帰宅後にわんわん泣きました」

 

味方になってくれると思った次女にも「お母さんはあれこれ人に言いすぎる」「人を管理しすぎる」と言われてしまったそう。一晩、泣きながら考えて、次の日には逃げるように辞表を出しました。

 

「もうここには居られない、良かれと思ってやったこと全てが無駄だったなんて。悲しいのと悔しいので、気持ちを抑えることができませんでした。夜逃げのように荷物をまとめて、誰にも言わずに居なくなりました」

 

そこからのMさんの気持ちはどん底で真っ暗です。追い討ちをかけるようにご主人からも「行動が激しすぎるんだ」と責められて。

 

「夫から逃げるために始めた仕事だったはずなのに、夫はそれ見たことかという感じでした。あまりの落ち込み具合を見かねた次女が、私を心療内科や婦人科に連れて行ってくれました。どうやら、傍目からも、仕事をすることで紛れていた更年期の症状がどっと前に出てきた感じだったんです」

 

そろそろ閉経の私。いま本当に、何も見えない闇の中にいます

 

普通ならこのあと、どう回復したかというお話を伺うのですが、Mさんの話しはここでぱたっと終わります。

なぜなら、まだMさんは渦中にいるから。

 

 

「今日は話しを聞いてくれてありがとう。いま私の心は真っ暗。私の更年期はこれからが本番です。

 

ひとつだけ、みんなに言いたいのは、更年期って心にも身体にもゆとりが思ったよりなくなっているということ。

 

何かから逃げようとして別のことでまぎらわせるのは、こんなに余裕のないときにはやめておいたほうがいい。もっと自分にラクをさせたらきっと違ったと思います。

 

逃げるのではなくて、離婚とか、別居とか、あるいは夫と話し合ってセックスを減らしてもらうとか、根本的なことをしたほうがよかった。でも本当にどうすればよかったかは、きっと更年期が完全に終わるころ、たぶん60歳くらいまでわからないままなんだと思う」

 

 

≪肌育美容家 今泉まいこさんの他の記事をチェック!≫

 

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