「自己責任」と言われ続けるくそったれな社会。サバイブするための視点の変え方って?|『銃・病原菌・鉄』
OTONA SALONE / 2022年5月10日 17時30分
あなたは今週、どんな本を読んでいますか?
国内の読書会のパイオニアにして、日本最大級の読書コミュニティ「猫町倶楽部」のメンバーの皆さんが、働く40代女性のために自分の読書体験をシェア。おすすめの書籍が「自分をどう変えてくれたのか」、その体験を教えてくれる連載です。
今週のオススメ人は、30代後半の男性・ナカノさんです。
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はじめまして、愛媛県在住の30代後半アラフォー男のナカノと申します。 サービス業(税務・会計・コンサル等)に従事していたのですが、先月会社を退職して次の人生について考え中です。 読書は昔から割と好きな方でした。ジャンルとかは浅く広く何でも読むタイプです。 今日は私が猫町倶楽部に参加するきっかけになった本を紹介させて頂きます。
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今週の1冊▶『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド・著
まず、この本にありがとう。私は読書会コミュニティと出会えた
この本が私にもたらしてくれた大きなものが2つある。ひとつは猫町倶楽部というコミュニティに出会えた事だ。この本を読み終えたあと、ふと検索エンジンに『銃・病原菌・鉄』と入力した。その検索結果の中に猫町倶楽部のページがあった。2週間後に『銃・病原菌・鉄』のオンライン読書会があるとの事だった。
カレンダーで予定が空いている事を確認して、すぐに参加する事を決めた。
猫町倶楽部という名は、以前に代表の山本多津也さんが執筆した書籍『読書会入門』を読んで知っていた。ただ、読んだ当時はオンラインでの読書会が始まる前で、興味はあったが遠いので参加できなかったのだ。
こうして猫町倶楽部に参加してからもうすぐ1年半が経つが、率直な感想として参加して良かったと思っている。一人では読み切れない難解で長い本も、みんなと一緒に読めば読み切れる。年齢・性別・地域を問わずに色々な人とちょうど良い距離感で話せる場所だと思っている。
視点を変えると世界はこんなにも違って見えてくる。この驚きが読書だと思う
この本が私にもたらしてくれたもう1つのものは、マクロな視点で物事を見る大切さだろうか。
この本の素晴らしさは、まずタイトルにある。「銃・病原菌・鉄」というタイトルがこの本の問いの答えになっているのだ。
本書の問いとは、「アメリカ(移住してきたヨーロッパ人)が、世界で覇権を握っている理由は何か?」という問いである。
著者のジャレド・ダイアモンド氏は、移住してきたヨーロッパ人が戦争に勝利した理由を『銃・病原菌・鉄』の3つであると結論付けた。つまりヨーロッパ人が、銃という武器を製造でき、病原菌に対する耐性があり、鉄の製造ができたから世界の覇権を握れたという事である。
著者は、ヨーロッパ人が優秀だったからこれらの3つの要素を手に入れる事ができたのではないと主張している。単にヨーロッパという場所が、上記の3要素を入手するのに適していたからだという。
本書はパプアニューギニアからスタートする。原住している賢い人々を見た著者は、白人が彼らより優れているのではないという視点から話を始める。
人類史や世界史という一大スペクタルの中でも、特に「病原菌」の項は、目から鱗が落ちた感覚だった。新型コロナウイルスに対する人類の根源的な恐怖も本書を読めば少し理解できた気がする。
「親ガチャ失敗」「人類の存亡」どちらもフレームは同じ。日本人よ、自責を手放せ
本書では国家や世界という大きな枠組みが語られているが、私はここで語られている事が個人や家族という小さな単位でも当てはまると感じた。
個人単位で考えると、生まれてくる家庭や親や環境は本人の自由意志で選べない。例えば「親ガチャに失敗した」という事は本人の責任ではない。
人間は他人との差異を意識する生き物である。その差異が、嫉妬や自己嫌悪や優越感という感情を呼び起こしたりする。
上手くいかなかった時や逆に上手くいった時、人は身近なところに原因を考えがちだ。一番身近にいる自分自身というものにベクトルが向きやすいが、もう少し大きな視点で本質的な原因を探すと全く別のところに原因があったりする。
これがマクロな視点で物事を見る大切さであり、環境的要因(≠地政学的要因)の影響力の高さ、本書から得られる視点だ。
始まる前から勝負が決している事はかなりある。自分自身でどうにもならない事もたくさんあると感じる。つまり、無意味な「自己責任」というものを切り離して考えようと思うことができた。
この本を読み終わった後に「自責の念」という随分大きなトゲが「自己責任」という言葉から抜け落ちた。
『銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎』 ジャレド・ダイアモンド・著 倉骨彰・訳 990円(10%税込)/草思社
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