54歳で閉経。このめまいやホットフラッシュは「いつ」治りますか?【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#7
OTONA SALONE / 2022年6月25日 21時0分
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#7
Q・更年期が終われば痩せやすくなって、めまいや鬱も元に戻りますか?
54歳で閉経しました。その前から生理の量が多かったり、時々めまいが出て軽く鬱っぽくなっていました。閉経から2年たった今は、ホットフラッシュと動悸があり、また記憶力が衰えたと感じます。痩せにくくもなりました。
耐え難いというほどではないにせよ、40代後半に比べれば不調が重なっている実感があります。年齢的に色々な機能が徐々に衰えるのは理解できますが、更年期明けたらこれらの辛さはどの程度軽減されるのでしょうか? たとえばまた痩せやすくなるのでしょうか? それはいつ頃なのでしょうか?
(まつりさん・56歳 更年期症状の度合い/不調が出ることもあるが、なんとか乗り切れそう)
A・加齢もあるのですべてが「元に戻る」ことはないのですが……
まつりさん、こんにちは。「耐え難いというほどではない」ということは、ある程度順調に更年期の着陸ができているのだと思います。素晴らしいですね。
さて、ご質問へのお返事です。シンプルに、更年期に由来するものは治り、加齢に由来するものは治りません。また、大抵は閉経から5年くらいで収まります。でも、肝心の、どの症状が更年期に由来するのかの線引きがわかりにくいんですよね。
ぼくも普段の診察で「先生~、しんどいんですけど、このしんどさって治るんでしょうか~」なんて相談を受けます。「その時になってみなきゃわからないよ」と返事をするんですが、ご安心ください、基本はよくなります。
ホットフラッシュは更年期より前には確実になかった症状なのでみんなが更年期症状として気が付きやすい。これは治ります。動悸も、更年期由来であれば治るでしょう。鬱は更年期由来かの判定が難しいですよね。さらに微妙なのがめまいです。
めまいの原因が更年期かどうかを見分けるコツは…「耳科」にかかること
まつりさんの症状が「更年期によるめまい」ならば、あと数年でラクになっていくでしょう。ただし、めまいにもいろいろな原因があり、それが本当に更年期に由来するのかが難しい。耳鼻科は数軒行ってください。しかも、めまいならば鼻ではなく耳の専門家に行かないとなりません。
病院の選択はなかなか難しい。たとえば耳鼻科ならば鼻が得意な先生、耳が得意な先生に別れます。まず、耳鼻科と検索して出てきた近所のサイトを上から開いて比べてみてください。先生がどこか特定の学会に参加していると書いてあれば、それが得意な分野です。また、診療内容のいちばん最初に挙げているものは多くの場合でいちばん得意な分野でしょう。そのほか、サイト内にめまいのコラムを書いているような先生ならば間違いなくめまいが得意な先生です。
こうして見当をつけたら次に電話をかけましょう。予約不要でも電話をするんです。そして、「めまいの人がいっぱいお見えになりますか? 先生はめまいがお得意ですか?」と受付の方に聞いてください。いちばんいいのはめまい外来がある病院ですが、どちらにせよ複数の病院に行くのが重要です。3軒行って異常がないならそれは更年期障害ですから、更年期が終わると治ります。
3軒行くのにも理由があります。日本の医療水準は非常に高いので基本信頼していいです。でも、10%くらいはイマイチな場合がある。イマイチを2回連続で引く可能性があるので3軒と指定しています。
このときにすごく大事なのは、「更年期のめまいで」と絶対言わないこと。ただ「めまいが辛い」という話だけしてください。更年期という予断を持たせると診断がそっちに引っ張られる可能性が出てきます。更年期関連での受診の際は「更年期と言わないこと」が非常に重要です。
HRTは何でも治す魔法ではない。必要な人が必要に応じて使ってください
めまいが出るが、HRTをすべきか?という質問もいただきました。ぼくはどちらかといえばHRT慎重派ですが、その理由はもともと静脈血栓塞栓症が専門だったからです。エコノミークラス症候群とも呼ばれるこの病気はHRTでリスクが上がるものの一つで、いくつかある典型患者像の一つが「HRTを漫然と続けた女性」でした。
HRTはすべてが治る魔法の薬というわけでもなく、相当数はよくなるけれども100%ではありません。なぜなら、すべての症状がホルモン由来というわけではなく、加齢もかなり混じっているからです。それでも半分以上は効くと思いますが、ほぼ100%効くのであればこんなに普及しないわけがないのです。医師が出さないということは、ぼくが感じるようなリスクをやはり他の医師も広く感じているということ。そのOKかNGかの弁別に特有のコツが必要なため、HRTと付き合い慣れている先生を探して最初からそこに行くのがベターです。
お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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