白昼堂々ホテルへ…。小さなコミュニティで不倫バレし、居場所をなくした38歳女性の末路は(後編)
OTONA SALONE / 2024年3月26日 19時30分
いけないことだとわかっていても、既婚者と肉体関係を持てば「不倫」になります。
誰かとのつながりを求める自分をそのときは止められず、身を浸した先に終わりを迎える人も多いもの。
過去に不倫をしていた人は、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。
【不倫のその後】#3 後編
彼女が怯える理由は…
「行く場所ねえ。新規開拓は?」
軽い調子になるよう声色を上げて返すと、喉を鳴らす音がした後で
「どこで誰に会うかわからないから、怖くて」
と、奈々はさっきと同じく低い口調で答えた。カタンと缶をテーブルに置く音が聞こえた。
「街じゃなくて、近所でもいいんじゃない?」
元より外で飲むお酒が好きで、正社員として働き収入もしっかりとある独身の奈々は、自由に使えるお金も時間もあった。それでも、マスターとの不倫が破綻してからは、この「どこで誰に会うかわからない」を繰り返して街に行く足が遠のいていた。
「近場はさあ、ご近所さんに会う可能性があって。それも煩わしいのよね」
「ああ、知られると気まずいのはあるよね」
ひとりだからこそ気楽に飲みたいのが奈々で、住んでいるアパートの近くのお店には昔からあえて顔を見せないことも以前話していた。自分が窮屈な思いをしないようにと街でもお店選びには割と慎重なのは感じていたが、赤の他人の女性に絡まれた一件からは、「未知の人」の存在に怯えるようになっていた。
もしあのときの女性と、どこかで遭遇したら、あのとき客でいた男女のグループのなかに、自分を知っている人間がいたとしたら。そんな可能性はわずかもないと頭でわかってはいても、「バーのマスターにデレデレとしていてほかの常連客に嫌味を言われた自分」の衝撃は、奈々から新規開拓の楽しみを奪っていたのだった。
そして、不倫相手でもあるマスターの態度が「ひどかった」ことも、奈々のなかにしこりを残していた。
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関係のあまりの軽さに
その夜の一件を報告されたとき、
「あの人もさ、いきなり文句を言ってくる女の人にゴマをするなんて、ひどくない?」
と憤慨した口調で話す奈々に、
「マスターの立場なら、感情が立っている客を抑えるのが最初だと思うよ、仕方ないよ。ほかのお客さんもいたんでしょ? だったら騒ぎを大きくしないのが最優先じゃない?」
と、立場の違いを冷静に説いたが、奈々は
「次の日に私に来るのを控えろって言うのはどうなのよ」
と怒りが収まらない様子だった。
だから、あなたが思っているのとマスターの気持ちはまったく別なんだよ。
そう言いたいのを堪えながら、「あなたのほうが近い存在だから、お願いしやすかったのだろうね」と答えた。実際に奈々がお店でどんな振る舞いをしていたのかはわからないが、常連客から指摘が来る程度には目立つものだったとしたら、まずそこを解決するのが経営者としての考えだろう。
つまり、奈々の言動が自分と不倫をしているせいなら、「近い存在」として馴れ馴れしさが出ているのであれば、店としてマイナスの客になるわけで、排除を考えるのは当然なのだ。奈々より古い常連客を大切にするのは理由があるはずで、それが店の経営を支える存在なのだとしたら、「店の経営が生きがい」と話す男性の決断として違和感はない。
奈々はそれに気が付かない。ふたりの関係は不倫だからこそ軽いもので、「問題」が起こればつながりごと切れる。相手に絶対的に優先するものがあれば、それを上回る存在にならない限りは簡単に捨てられるのだ。
「店に来るのはしばらく控えてほしい」と言われた時点で、不倫をやめることにしたのは奈々の英断だと心底思うが、それは相手の立場を考えて身を引いたのではなく「自分を大事にしなかったから」が理由で、その終わりも、この男性が自分について周囲に何か話すかもしれないという奈々の不安を生んでいた。
◯◯を捨てる覚悟をしないと… 次ページ
窮屈さを捨てる覚悟
「今度さ、ふたりで飲みに行こうよ」
いいお店を探すからさ、と続けると、奈々が驚いたように「アンタ飲めないじゃん」と声を上げた。
「飲めないけど、外でなら少しは進むよ。付き合ってよ」
笑いながら言うと、
「居酒屋ならカウンターにしようよ。二軒目まではいてよね」
と、さっきと打って変わって明るい声で奈々が返した。
その窮屈さは自分が生んだもので、それなら解決もまた自力でしか叶わない。ひとりで出ていくのが怖いなら、誰かと一緒にグラスを空ける時間を楽しむのも、意識の切り替えに効くかもなと思った。不倫はもう終わったのなら、自分でその縁を切ったのなら、その影響に怯えて暮らすのではなく新しい現実を作っていくことが健全なのだ。
「おしゃれなところより、だらだらと飲める雰囲気がいいなあ」
最後にふたりで居酒屋に行ったのは不倫を止めたときだったなと思い出しながら、都合のつく日を言い合う頃には、奈々の様子は元気が戻っていた。
「ありがとう。アンタと飲むの、久しぶりね」
弾んだ声でそう言う奈々に、「こっちも話したいことがいっぱいあるよ」と返して、話題は奈々の仕事のことに移っていった。
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