平安時代の女性「生理」はどうしてた?じつは「男女の恋愛」に絶好のチャンス、ってどういう意味?
OTONA SALONE / 2024年4月23日 19時31分
*TOP画像/ききょう(ファーストサマーウイカ) 大河ドラマ「光る君へ」16回(4月21日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代における人びとの「生理(月経)」のとらえ方について見ていきましょう。
平安時代、生理は「穢れ」だった。つまり女性は穢れた存在だった!?
身体が成長した女の人は子どもをつくるための準備を1カ月前後の周期で行います。このとき、子どもができなかったために必要なくなったものをゆっくりと身体の外へと出していきます。このメカニズムが生理です。
しかし、生理に対して「恥ずかしい」「人前でどうどうと言うものではない」といった社会通念が現代にも根付いています。「風邪でお腹が痛いです」とは所かまわず言えても、「生理でお腹が痛いです」とはなかなか言えませんよね。また、生理用品は周囲の目につかないよう、持ち歩くのがマナーとされています。
平安時代において生理は制度的に禁忌(タブー)とされ、不浄とみなされていました。
生理期間中の女性は神仏の前に出ることが認められなかったばかりか、宮中で暮らすことも許されず里邸(さとやしき)に下がらなければなりませんでした。
(江戸時代においても女性は生理小屋に生理期間中は隔離されていました)
平安時代、生理の血液は穢れと公に規定されていましたが、そこには女性を排除し、政治体制を強化しようという目論見もあったそうです。
生理に対する不浄観は女性=罪深いという見方にも通じます。このうした見方は「女人禁制」につながります。当時、比叡山や金峯山において女性は排除されていました。
ちなみに、出産も不浄と考えられていました(※)。激しい勢力争いの渦中にある貴族にとって子どもは何よりも望むもの。
しかし、女性は子どもを産むと産穢を受けたとされ、1週間ほど行動を慎まなければなりませんでした。また、男性(夫)が出産に立ち会うケースは少なかったものの、居合わせた場合は女性と同様に扱われました。
※当時の出産は死ととなりあわせで、母親は生死をさまよっていると考えられていた。また、生まれてきた子どもには死後の世界の穢れがのこっていると考えられていた。
ナプキンどころかパンツもなかった平安時代。生理のときはどうしてたの?
つづいて、生理用品の話を少し。現代ではさまざまな種類のナプキンがありますよね。肌ざわりのよさを重視したタイプやもれ防止を重視したタイプもあります。自分に合ったものを選ぶことで、生理の負担や不安を軽減できます。
平安時代は袋状に縫い合わせた絹の中に真綿を入れたものを使用していました。また、麻布や紙(※)をあててから「またふさぎ」いうふんどし状のものでおさえる方法もあったそうですよ。ただし、これらは貴族女性の話。
庶民については記録があまり残っておらず定かでないものの、古くなった着物や葉をあてていました。
江戸時代以降、肌触りのよい木綿があて布として使われるようになります。ただし、使い捨てにするのではなく、繰り返し使っていました。
※平安時代、紙は高級品だった。貴族たちは紙の節約のため、手紙の裏に手紙を書くこともあった。
貴族男性の涙ぐましい努力とは?恋する男女にとって女性の生理期間は逢瀬のチャンス
女性にとって憂鬱な生理期間。しかし、恋する女性にとって生理期間は待ち焦がれるものでもありました。前述のように、生理中の女性は宮中を離れ、里邸に下がらなければなりません。
当時の貴族にとって生理中の隔離期間は恋人と会えるごくまれな機会の1つでした。男性は恋心を抱く女性に会うため、乳母や女房の手を借りて、女性の居所に入り込んでいました。
公に関係を結ぶことが認められない相手を好きになった場合、こうした期間も利用して会っていたのです。
乳母や女房はお仕えする姫を心から尊敬し、慕っていることが多く、恋の手助けを多少の危険をおかしながらも行っていたそうですよ。
つづき>>>「病気になったら死ぬしかなかった」平安時代。なぜそんな残酷なことがまかり通ったのか?
参考資料
・田中ひかる 『月経と犯罪』
・田中ひかる『生理用品の社会史』
・木村朗子『紫式部と男たち』
・繁田信一『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』
≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫
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