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実はすごい運動量。鬼ごっこで肥満の数値が正常に

パラサポWEB / 2023年6月28日 7時0分

だるまさんがころんだ、高鬼、氷鬼、手つなぎ鬼……種類は違えど、誰もが子どもの頃に一度はやったことがある「鬼ごっこ」。この、老若男女を問わず多くの人にとってなじみ深い遊びを、本格的なスポーツ「スポ鬼(スポーツ鬼ごっこ)」として整備したのが、一般社団法人鬼ごっこ協会。楽しくプレーできるだけでなく、子どもの運動不足解消や、コミュニティの醸成、地域活性化にも繋がるという注目のスポーツについて、協会理事の羽崎貴雄氏にお話を伺った。

鬼ごっこをスポーツ化したスポ鬼とは?
スポーツ鬼ごっこ協会ホームページより

「スポ鬼」とは、その名の通り、日本人なら誰でも一度はやったことがある「鬼ごっこ」を、時代に合わせて新しく開発したスポーツ競技。

基本的には7人1チームで、2チームの対戦形式だが、人数を変えてもプレーできる。1試合5分間×2で、ハーフタイムは2分間。上記のようなコートのセンターラインを挟んで、それぞれのチームが自陣のTサークルと呼ばれるエリアに置かれたトレジャー(宝)を守りながら、同時に相手チームのトレジャーを奪いに行く。時間内により多くのトレジャーをハント(獲得)したチームが勝ちとなるが、センターラインを越えて敵陣に入った場合、相手チームの選手にタッチされたらアウト。ただし、自陣のSエリアと呼ばれる安全地帯に戻れば何度でも再スタートができる。陣取り系の鬼ごっこの進化バージョンといえば分かりやすいだろうか。

はじまりは子どもの肥満改善
オンライン取材を受けてくれた、一般社団法人鬼ごっこ協会理事の羽崎貴雄氏

スポ鬼開発のきっかけは、今回取材を受けてくれた一般社団法人鬼ごっこ協会の理事羽崎貴雄氏の父で、同協会の代表理事羽崎泰男氏が行った子どもの肥満の研究。父の泰男氏は1985年に旧厚生省が整備、開館した「青山こどもの城」(東京都渋谷区)で行われる運動、遊び、音楽、造形、映像等の各種プログラムの企画制作プロデュース、運営実施の責任者を長年に亘って務めていた。

「30年ほど前、当時の厚労省から子どもたちの肥満改善のためのプログラムを開発してほしいという依頼を受けた父が、運動が苦手な子どもでも楽しく体を動かしていた鬼ごっこに注目して研究をスタートさせたことが始まりです」(羽崎貴雄氏、以下同)

デジタルゲームが普及しはじめた当時、外遊びをしなくなった子どもたちの肥満が社会問題として注目されるようになっていた。

「日本では鬼ごっこは当たり前すぎて、その重要性について深く考えたことがない人がほとんどだと思いますが、実はすごい運動量です」

実際、泰男氏らの研究によると、鬼ごっこのプログラムを1年間通して子どもたちに受けてもらったところ、遊びの感覚で楽しく行ってくれた上、肥満の数値が正常へと戻るデータが出たそうだ。

プレー人口10万人超え、大人もハマるスポ鬼
2021年6月にリリースされたスポ鬼の公式アプリ「鬼ごっこリーグ」

現在では、子どもだけでなく大人がハマるケースも増えていて、協会が認定したスポ鬼の審判員と指導員は3200人以上。また、2021年には協会公式アプリ「鬼ごっこリーグ」がリリースされた。このアプリを使えば、協会が認定した日本全国の「スポ鬼」のチームやプレイヤー、直近で開催される大会などを検索することができ、初心者でもプレーに参加することができる。今までに、スポ鬼をプレーしたことがある人は10万人を超えた。

「実は、運動が苦手だという人ほどハマったりするんです。明確な理由は分かりませんが、ルールが影響しているかもしれません。というのも普通のチームスポーツは誰のせいで点を取られたということが分かりやすいじゃないですか。でもスポ鬼って、全員が攻めと守りを同時に行っているので、誰がどこで何をやっているかが意外と分かりづらく、誰が悪いという風になりづらい。しかも、ドッジボールなどと違って、相手にタッチされても安全地帯に戻れば何度でも復活することができるため、最後まで全員がプレーすることができるんです」

運動が苦手な子もヒーローになれる可能性が⁈
手前のホームと呼ばれる台にのったトレジャー(宝)をハントしようとする選手と、トレジャーを守ろうとする選手

また必ずしも運動能力が高い人がたくさん得点できるわけではないところも、これまで運動が苦手だった子どもが積極的になる理由ではないかと羽崎さんは分析する。

「運動能力が高い子どもは、点数を取りたいので攻めに行きたがるんですよ。そうすると守りが手薄になったりして、先にトレジャーを取られてしまうケースがよくあります。ところが運動が得意な子が守りに入り、普段の体育などでは影が薄いような子が攻めに回ると、うまくいったりするんです。人間って動くものに反応するからでしょうか、素早く動く運動能力の高い子は相手に気付かれてタッチされやすい。反対に静かにそっと動く子が相手に気付かれずに上手にトレジャーをハントしたりするんです。ですから、役割分担がすごく大事になってきます」

小学校などで実施すると、運動嫌いだった子が活き活きとプレーしていて担任の先生が驚くこともよくあるのだとか。

「運動嫌いな子どもって、成功体験が少ないから楽しくないというのがあると思うんです。その点、スポ鬼は、自分はトレジャーをハントできなくても、じっと待っていて相手に1回でもタッチできれば、『すごい』となって褒められるから楽しくなる。あとは普段じっとしているのが難しい発達障がいの子や自閉症の子どもが、リーダーシップを発揮してチームをまとめだしたりしたケースもありました。それを見て僕も驚きましたけど、先生はもっと驚いていましたね。スポ鬼には、楽しくなるスイッチをオンにする何かがあるのかもしれません」

世代や性別を超えて楽しみながら地域を活性化
子どもが相手とはいえ、大人も真剣な表情で勝負

こうしてスポ鬼が広まっていく中で、羽崎氏はあることに気付いたという。

「東日本大震災ではそれまで住んでいた場所から離れなければいけない人も多く、これまであった地域ごとのコミュニティが崩壊してしまったと言われました。しかし、スポ鬼の活動で全国を回ってみると、その他の地域でも徐々にコミュニティの関係は希薄になっているんじゃないかと感じるようになりました。隣近所にどんな人が住んでいるのか知らない人が増えていると言いますし、子どもたちが安心して遊べる公園も減ってきています。そんな中、子どもたちが普通に鬼ごっこをして遊べる環境がある街というのは、健全で安心感がある。鬼ごっこが当たり前にできるようになれば街に活気が生まれますし、安心や安全も感じることができる。ですから今は健康促進と同時にコミュニティ作りとしての役割も大事だと思ってます」

実際、日本全国の小学校や教育委員会、町内会などの自治体などに依頼されて研修を行ったり、協会が認定した審判員や指導員を派遣してスポ鬼を実施したりしているそうだ。

「大会もたくさんやっていますが、ある意味でスポ鬼が唯一無二だと思うカテゴリー分けがあります。それはアンダー9(9歳以下)と、アンダー12(12歳以下)と13歳以上の全カテゴリーの選手がコート内にいないとダメというルールです。今までですと下が6歳ぐらいから、上が50代の選手が同時にコートの中にいて、大人は全く手を抜かずにやったケースがあります。いろんなスポーツを調べましたが、おそらく他にはないと思います。しかも20代、30代の大人が、小学1、2年生を相手に本気で挑む。年齢も性別もほぼ関係なくプレーできるので、コミュニティの醸成に向いていると思います」

協会には、3種類の公認団体制度があるが、そのうちの「地域連盟」に認定されると、地域でスポ鬼の大会を開催したり、有望な選手を発掘、育成するためのトレセン(トレーニングセンター)を開催したりできる。すでにいくつもの連盟ができていて地域活性に一役買っているそうだ。


コロナ禍で一時期活動を休止していたが、スポ鬼には日本代表チームがあり、日本国内はもとより、世界にスポ鬼を普及するための活動を行っている。いずれスポ鬼が世界中で行われるようになり、世界大会が開催されたり、オリンピックの種目になったりする日がくるかもしれない。そんなこれからのスポーツ、スポ鬼に興味をもったなら協会公認のアプリをダウンロードして、住んでいる地域で活動しているチームや、直近で行われる大会を探してみてはどうだろう? まずは見学するだけでもその魅力が十分わかるはずだ。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

写真提供:一般社団法人鬼ごっこ協会

スポーツ鬼ごっこ公式ホームページ https://sportsonigokko.onigokko.or.jp/

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