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【竹原慎二の元ライバル】「止められる悔しさ」を知るレフェリーはなぜ「ストップ」が早いのか トップ選手だから見抜ける「ボクサーのダメージ」とは

NEWSポストセブン / 2024年7月5日 11時15分

「ジャッジを何試合か担当してから、レフェリーを務めることになったが、ものすごく緊張したのを覚えています。レフェリーに止められて負けた経験が自分にはたくさんあったから、止められる選手の悔しさがよくわかる。でも、選手生命を潰すようなレフェリングは絶対にダメだ。そんなことを考えながらリングに上がりました。

 嬉しくて仕方がなかった選手時代のデビュー戦とは違い、人の命を預かる立場ということで、1発のパンチも見逃してはいけない。自分が試合するほうが10倍も20倍も楽だった」(ビニー・マーチン、以下同)

 レフェリーには試合を止める権限が与えられている。レフェリーは選手のダメージを見ながら試合をコントロールするが、早めにストップをかければ選手やセコンド、そしてファンからも文句が出る。

 審判としてのキャリアはすでに25年を迎えるが、マーチンは「ストップが早いレフェリー」と評されている。

「最初は“早すぎる!”とかなり言われました。私もボクサーをやっていた時に“まだ闘えるのに、なぜ止めるんだ!”と思った試合はあります。ただ、現役を引退してからの人生のほうが長い。審判員を始めて半年ぐらいした頃から“レフェリーは選手の命を守らないといけない”と強く思うようになりましたね」

 マーチンによれば、「ストップされた選手はあまり文句を言わない」という。ファンも言わない。激しいクレームをつけるのはセコンドだ。

「選手に試合を続けさせてやりたいという気持ちはわかります。レフェリーをやっていて、そこが一番難しかったですね。(ボクシングに関する著作が多い)作家でスポーツライターの佐瀬稔さんは『遅すぎるストップはあっても、早すぎるストップはない』と話していましたが、すばらしい表現だと思います」

 レフェリーを長く続けていくうちに、その考え方に自信がついた。トップ選手だったからこそ、目の前にいるボクサーのダメージがわかる。

「判断が難しいのはダウンのカウントです。8カウントで立ち上がった選手のグローブを持ってファイティングポーズを取らせます。でも腕に力が入っていない、あるいは目線が定まっていないようなら、私が2歩ステップバックして、“こっちに歩いてこい”とジェスチャーします。選手が1歩、2歩と進んでもう一度ファイティングポーズを取れば続行させますが、少しでもグラッとしたら無理をさせない。セコンドは“まだできる! 続けさせろ!”と怒鳴るかもしれませんが、私は躊躇なく試合をストップさせます」

スリップか、ノックダウンか

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