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【竹原慎二の元ライバル】「止められる悔しさ」を知るレフェリーはなぜ「ストップ」が早いのか トップ選手だから見抜ける「ボクサーのダメージ」とは

NEWSポストセブン / 2024年7月5日 11時15分

 スリップダウンかノックダウンかもレフェリーの判断だ。

 ノックダウンは「足の裏以外がリングについた状態」で、レフェリーはカウントを始める。10カウントまでに立ち上がってファイティングポーズを取れなければKO(ノックアウト)となる。スリップダウンは相手のパンチが当たっていないのに自分で足を滑らせて尻もちなどをつくケース。レフェリーは試合を止めて「スリップダウン」を宣言する。当然、ダウンカウントはない。

 だが、相手の攻撃で倒れたのか、自分でバランスを崩したのかが微妙なケースもある。その判定がトラブルになることは少なくない。

「選手は“ダメージを受けていない”とアピールするし、セコンドも“(相手のパンチが)当たっていない!”と猛抗議します。ノックダウンかどうかはジャッジの採点に繋がるので当然のことです。微妙なケースはレフェリー次第。研修では最も時間をかけて指導される、レフェリー泣かせのシーンのひとつです」

 B級、A級にステップアップしても、常に審判員研修がある。ルール改正や特殊なケースを設定して審判員が状況を説明する。また、実際の試合のビデオを観て採点したうえで、次はスロー再生映像で同じ試合を採点する。さらに「このラウンドをどう判断したのか」「このパンチは有効打かどうか」といった点をディスカッションする。

 審判員たちはそうやってレベルアップを続けている。

日本ミドル級王者から「命を助けてくれてありがとうございました」

 KOは「ボクシングの華」といわれるが、レフェリーにとっては最も神経を使うシーンだ。ダウンする前にストップすると「早過ぎる」と批判されるが、意識朦朧としてサンドバック状態にさせてしまうと「手遅れ」となる。

「激しい打ち合いになると選手のダメージを見ます。これはレフェリーにしかできない。続行が無理だと判断したら、両者の間に割って入る前に“スト〜ップ!”と大声をあげる。この判断を瞬時にできるレフェリーこそ一流だと思います」

 判断は必ずしも打ち合いの場面とは限らない。前のラウンドに多くパンチを浴びた選手であれば、1分間のインターバルで様子を観察する。ダメージが大きい場合は、次のラウンドで防戦一方になった時点で試合を止めることもある。

 印象深い試合をマーチンに訊ねると、「2013年8月の日本ミドル級タイトルマッチ」と即答した。やはりレフェリーストップが絡む試合だ。

 王者・胡朋宏の初防衛戦で、対戦相手はミドル級1位の中川大資。中川はすでに日本2階級制覇を成し遂げていた実力者だ。結果は7ラウンド2分56秒で胡がKO負け、王座から陥落した。7ラウンド残り4秒の場面で、マーチンは胡のダメージが大きいと判断して試合を止めた。胡はダウンからかろうじて立ち上がったが、マーチンは両手を頭上で交差してレフェリーストップしたのだ。

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