【逆説の日本史】ロシアの第一次大戦からの離脱で英仏が目をつけた「チェコ軍団」
NEWSポストセブン / 2024年11月21日 16時15分
これはチェコ軍団からすれば、捕虜の身から解放されたということである。チェコ軍団は待ってましたとばかりに、オーストリア・ハンガリー帝国から独立して自分たちの国を建国したいと表明した。これに目をつけたのが英仏である。
ロシア帝国がソビエト連邦になって「連合国」から離脱したことによる西部戦線の戦力低下を、早急に補う必要があった。そこで、このチェコ軍団を援助して西部戦線で戦わせればいい、ということになったのだ。だが、問題はどうやってチェコ軍団を「ロシア」から西部戦線に移動させるか、である。
「ロシア」の西隣りがドイツである。話は簡単のようだが、いかに勇猛果敢なチェコ軍団とは言え、補給も援軍も無しに単独でドイツを攻撃することは不可能だ。かと言って一番近いフランス軍と合流するためにはドイツの領域内を敵中突破しなければならない。関ヶ原のときの薩摩勢の「退き口」でもあるまいし、そんな無謀なことをすれば殲滅される恐れがある。
だが地球は丸いのだから、西では無く東に向かっても遠回りではあるが、英仏軍と合流できる。具体的にはシベリア鉄道を使ってバイカル湖以東に移動し、ウラジオストクから船で英仏に向かう手だ。
英仏が得た絶好の「大義名分」
ただ、ここでもう一つ問題が生じた。ロシア帝国はソビエト連邦になったことで一応は敵では無くなったはずなのだが、ソビエトはチェコ軍団に強い警戒心を抱き、武装解除して民間人になるならウラジオストクへの移動を認めよう、と通達した。
現代の日本は平和ボケの社会なので、軍隊の武装解除ということがどんなに深刻で当事者にとっては許し難い事態かということかがよくわからない。敵は武装しているのだから、武装解除ということは丸腰になっていつ殺されるかもしれない状態になれ、ということである。
これも日本史の例を見れば、なぜ織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちしたかと言えば、同じ仏教徒同士で殺し合いをやめない仏教勢力に対し武装解除を求めたからである。僧兵を擁し大名に匹敵する軍事力を持っていた延暦寺は、これを断固拒否した。だから信長は、一罰百戒の意図のもとに比叡山に鉄槌を下した。この一挙は絶大な効果があった。だからこそ天下人の後継者豊臣秀吉は刀狩り(武士以外の武装解除)に成功し、徳川家康の時代には寺院から僧兵が一掃された。
源義経の「一の子分」武蔵坊弁慶は鞍馬寺の僧兵であったし、その時代から戦国時代にかけて東大寺や興福寺の僧兵が強い力を持っていたことをお忘れ無く。どんなものでもそうだが、突然無くなるわけでは無い。僧兵は、信長・秀吉・家康の努力によって完全に廃止されたのである。
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