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【逆説の日本史】ロシアの第一次大戦からの離脱で英仏が目をつけた「チェコ軍団」

NEWSポストセブン / 2024年11月21日 16時15分

 武装解除というのはそれほど困難なことなのだ。なにしろ丸腰になるのだから、自分の墓穴を掘らされた上に銃殺されたり、連行されて過酷な強制労働に従事させられることもある。これはたとえ話では無い。後にソビエト連邦が、ポーランド軍と日本軍の捕虜に対して実行した残虐行為(カチンの森の大虐殺とシベリア抑留)である。

 逆に、ソビエト連邦に限らずどんな民主主義国家であっても同じことだが、国内に国家の統制に服さない強力な武装集団があるということは問題だ。いつ牙をむくか不安でもある。国家としては武装解除を求めるのは当然である。一方、チェコ軍団にしてみれば、武装解除など絶対に応じられない。

 だが生きている人間の集団である以上、衣食住は確保しなければならない。ソビエト連邦は武装解除に応じない限り、彼らに衣食住を提供するつもりは無い。となると、どういうことになるかおわかりだろう。チェコ軍団が食料を求めればそれは略奪ということになり、拠点を定めようとすれば占領ということになる。当然、ソビエト連邦軍の中核であるボリシェビキはそれを許さない。双方は武力衝突した。

 これは英仏にとっては有利な事態である。前回までの記述を思い出していただきたい。そもそも英仏は、ブルジョアジーを敵視するソビエト連邦をこれ以上発展させたらまずいと考えていた。そのためには、プロレタリア革命に反対する保守派つまり白軍を支援するのが最良の策である。

 しかし、いくら共産党が気に食わないからといって「彼らを潰すために派兵する」ことはできない。独立国で国民の支持を固めた政権を、戦争をしているわけでも無いのに攻めるわけにはいかない。そんなことをすれば「無名の師」(大義名分なき戦争)として国際世論の批判を浴び、歴史上にも悪名を残す。

 逆に言えば大義名分さえあれば出兵できるわけで、英仏は「ソビエトに弾圧されているチェコ軍団を救出する」という絶好の大義名分を得た。しかも、これについては新たに「連合国」に加わったアメリカも、もろ手を挙げて賛成した。

 十月革命を成し遂げた時点で、指導者のウラジーミル・レーニンは第一次世界大戦の収束に向けて「無賠償」「無併合」「民族自決」に基づく即時講和を世界に提案していた。これを「平和に関する布告」という。これに対してもっとも敏感に反応したのが、アメリカの当時の大統領(第28代)のウッドロー・ウィルソンだった。

 彼は理想主義者で共産主義者では無かったが、世界に新しい秩序を設けるべきだと考えていた。後に国際連盟の設立を提唱したのも、このとき帝国主義と決別したレーニンの布告に一部「賛同」したのもそのためだ。アメリカも資本主義の国家である以上、帝国主義の常套手段である「賠償請求」や「併合」を否定するのは難しいが、民族自決なら大手を振って賛成できる。じつは、これ以前に「民族自決」という言葉は無かった。辞典で「民族自決主義」を引くと、次のように説明されている。

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